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領土問題、武力衝突がないとは断言できない(辺 真一)

竹島問題では、日本政府は国際司法裁判所に提訴することに決めたようだ。理想は韓国同意による共同付託のようだ。

野田総理も玄葉外相も「韓国は堂々と出てくるべきだ」と李明博政権に共同付託を求めているが、韓国政府は「一考の価値もない」と拒否する構えだ。竹島をすでに実効支配している韓国とすれば、裁判は「勝ってもともと、負けて損々」という考えなので、当然の対応だろう。

ならばと、日本政府は1965年の日韓条約の紛争解決に関する公文、即ち「両国間の紛争は、まず外交上の経路を通じて解決し、解決できなかった場合は両国政府が合意する手続に従い調停によって解決を図る」との規定に基いて単独で提訴することも検討しているが、これまた韓国政府は日本との間に「紛争」はないとの捉え方で、無視する構えのようだ。

しかし、日韓条約が交わされた当時の日韓両国の国会議事録を読む限り、この公文が指す「両国間の紛争」が領土問題を意味していることは極めて明白だ。

一例として、今から47年前の1965年8月10に開かれた韓国国会の韓日条約特別委員会で後に大統領となった金大中氏(当時民衆党議員)が椎名悦三郎外相(当時)との間でこの公文を交わした李東元外務部長官を激しく詰問した質問のさわりを引用しよう。

「椎名外相は『竹島のことは必ずしも表示する必要もないので、日韓両国で残された懸案であるということにして将来処理することで合意した』と言っている。李東元外務部長官は独島問題は完全に我が方のものとして解決したと言っているが、一体どうなっているのか?椎名外相は(日本の国会で)『竹島問題を巡る紛争の解決に関しては交換公文で処理したことは韓国も十分承知している』と発言している。独島問題を完全無欠に大韓民国の領土であるとして合意を取り付けたというなら外務部長官、ここでその『宝の壺』を見せてもらいたい。独島問題が未解決問題として将来解決するようになっているとなると、話は違ってくる。一体、我々は条約を通じて何を得たのか?旧条約は初めから無効であることもはっきりさせられなかった。謝罪も得られなかった。独島問題についても解決できなかった。だから、この条約は棄権条約だ」

次期大統領の有力候補である与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クネ)氏は「「独島(竹島)は韓国の領土だ。日本がそれを認めれば、簡単に解決する」と述べているが、韓国人が思うほど事はそう簡単ではない。

昨年2月、「日韓キリスト教議員連盟」の日本側会長として訪韓した民主党の土肥隆一議員が韓国側の連盟と共同で日本政府に対して竹島の領有権主張の中止を求める共同宣言に署名し、ひと悶着起きたことはまだ記憶に新しい。

土肥議員は「個人的には竹島は日本の領土とは一概には言えないと思っている」と某紙にコメントしていたが、「非国民」として罵倒されるのを覚悟の上で署名したならば、たいした度胸だ。

では、これが韓国だったら、どうだろうか。果たして韓国の政治家に真似できるだろうか?まずあり得ないだろう。「売国奴」扱いされ、一瞬にして政治生命を絶たれるだろう。

韓国には国会議員が300人もおり、その多くは日本との友好議員連盟に属しているわけだから中には一人ぐらいは「独島(竹島)はもしかしたら、日本の領土かもしれない」と、相手の立場に立って考えても良さそうなものだが、韓国の政治家にはそれはできない。

これが、不思議なことに、相手が北朝鮮となると、話は別だ。黄海(西海)など領海をめぐる領有権問題で北朝鮮の主張に耳を貸す議員、国民はいくらでもいる。しかし、日本との領土問題となると、事は違ってくる。全員が全員、大韓民国の国益優先だ。

しかし、韓国が何を言おうが、誰が見ても、日韓の間には厳然として領土問題は存在する。また、尖閣諸島問題で日本政府が韓国と同じ言葉を発したとしても、どう転んでも、日中間にも領土問題が存在するのは歴然としている。現に外交摩擦や衝突が起きている。

お互いが古い海図や巻物を引っ張り出して「うちの方が先に発見したとか、先につばをつけた」と言っても、相手が納得、承諾しない限り、問題は解決しない。

双方が無人島である島から手を引くか、あるいは共有もしくは共同開発するなり歩み寄らなければ、いつの日か、武力衝突もないとは断言できない。そうした最悪のシナリオを避けるためにも、国際司法の場で第三者に裁いてもらったらどうだろうか。

【ブログ「ぴょんの秘話」より】