あのピーチプロジェクトの主催者を調べてみると…。(おしどりマコ)
筆者がマガジン9に連載している「脱ってみる?」から第49回を転載する。
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「ピーチプロジェクトって知ってる?」とチラシが送られてきたのは7月28日のことでした。
これね。
大阪の茨木の小学校5・6年生を福島の伊達市に8月16・17日と泊りがけで連れて行って、除染情報プラザを見学したり、桃の食べ放題をしたりするというプロジェクト。
ん? 除染情報プラザは1日目も2日目も行くのねぇ。
すぐに調べ始めました。
まず、福島や宮城の放射能測定室の方々に電話。
--桃の放射性物質の測定を最近した?
「うーん、桃は持ち込まれてないから測ってない、梅やさくらんぼは少し出るんだけど。
梅はあまり食べないほうがいいよ、ま、梅を食べ放題することないから大丈夫だと思うけど」
--あー、桃は食べ放題なんだよね、どうなんでしょう?
「桃のジュースは少し検出されたけど、産地特定できなかったから。
伊達の桃は測ってないけど、福島の桃は大丈夫って聞いたことあるから、また測っておくね」
--よろしく!
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で、主催の福島ステークホルダー調整協議会って何?
福島の方々に電話しまくってお聞きしたけど、みなさん「聞いたことなーい!」。
伊達市の職員もご存知なく。了解、調べます。
この協議会は今年の5月から発足していました。 事業計画書はこちら。福島県の田村市に住所があり
「放射能全般に関わるより正確な認識共有プロジェクト(通称:心の除染プロジェクト)」
をするための団体です。心の除染……。
お金の出所はどこ~? と調べると、内閣府の新しい公共支援事業交付金を使った、
福島県が地域の問題解決にあたる仕組みを作るための、地域づくり総合支援事業の募集で選定されてますね。
こちら。
おもな活動は月4回以上の講演会、家族のリスクマネジメント勉強会を開催、
そしてICRP(国際放射線防護委員会)と調整して
8月に「心の除染・国際シンポジウムin福島」を開催してメッセージを国内外に発信ですって。
で、ピーチプロジェクトに戻ります。
福島県内のあちこちの方々に伺うと、みなさん絶句してました。
「大阪の子供を福島に連れてきて桃の食べ放題?
うーん、それより、福島の子供をどこか線量の低いところに連れていって果物食べ放題させてよ!」
「桃は汚染されてないって聞くけど、だからといって
『心の除染』のアピールに他所から子供を連れてくるのはちょっとね……」
「うちも農作物が売れないから大変だけど、
でも、うちの子供に食べ放題をさせて売ろうとは思わないよ」
「安全なら、県知事や大臣の孫や子供に食べ放題させたらいいんじゃない?
そのほうがアピールになるよ」
などなど、ピーチプロジェクトに関してみなさん否定的でした。
で。このピーチプロジェクトがネットで話題になって、小学生を連れてくることは中止になりました。
代わりに大学生を連れてくる計画になったそう。 おぉ!
もとのチラシをよく見たら「ピーチプロジェクト・ジュニア」と書いてある!
ジュニアでない、ピーチプロジェクトを行うのかな?
そして、この関連で、福島ステークホルダー調整協議会の事務局長である
半谷(ハンガイ)輝巳氏が大阪の茨木で講演をされたのですが、半谷氏についてもいろいろ調べました。
半谷氏の活動の「たむらと子どもたちの未来を考える会」が発展して、
福島ステークホルダー調整協議会になったようです。
他の事務方も、半谷氏の経営する塾の講師の方々。
しかし、協議会の代表者は東大名誉教授安井至氏ですし、
ICRP委員と放射線審議会会長の丹羽太貴氏も名前を連ねてますよ!
半谷氏は積極的にあちこちで講演をされていて「今後200回開催する予定」とのこと。
ん? でも大学のご専門は全然別だよね? お仕事は塾の先生だし、
なぜ放射線のリスクに関する講演をされたり、伊達市の放射線アドバイザーをされているんでしょう?
経歴を拝見すると、放射線関連は「放射線安全フォーラム」に属されているのみ。
えー、これって……。前回の記事の田中俊一氏が副理事長をされているところですよね……
(脱ってみる? 第48回「原子力規制委員長になりそうな田中俊一氏は『除染マニア』で『自主避難者の敵』の件。」)。
そして半谷輝巳氏と田中俊一氏の共通点として、
お二人とも伊達市で放射線アドバイザーをされていますね。
田中氏が「放射線安全フォーラム副理事長」として原子力委員会で除染活動について、
発言されている議事録のくだり。前回も書きましたが重要なのでもう一度。
「この状況のままで今後の原子力の再生は非常にもう、
個人の考えですけれども、絶望的です。
とにかく何らかの形で除染をきちっと行い、
避難住民が帰ってこられるような状況を作り出されない限りは
これからの原子力発電を含めてそういったものはどう政策を進めていいかわからないな
ということがありましたので、私自身はそういう思いもあります」
田中氏のこの考えのまとめも再び!
原発事故
↓
原子力の再生は絶望的
↓
でも除染! 除染!
↓
避難住民が帰還
↓
再び原子力発電の政策を進められる☆
こんな除染も、心の除染も、ちょっとどうなの? ですけどね。
あら、半谷氏はドイツのシュピーゲル誌にとりあげられてますね!
記事は2012年の3月、福島ステークホルダー調整協議会の申請が4月、設立は5月なので直前ですね。
こちら。
ここに、気になる部分がありました。中ほどの、
Bis zehn Mikrosievert kein Problem, sagt Hangai
「半谷氏は10μSVまでは問題ないと言う」というくだり。
Hangai erzählt ihnen, dass an einzelnen Orten der Erde, zum Beispiel in Iran, die natürliche Strahlenbelastung dauerhaft zehn Mikrosievert pro Stunde beträgt. An einem Bächlein in der Nähe hatte sein Geigerzähler vorhin einen Spitzenwert von fünf Mikrosievert gemessen. Er persönlich halte Werte unter zehn Mikrosievert pro Stunde für unbedenklich, sagt er. Die Augen der Frauen beginnen zu leuchte
半谷氏は自然放射線がイランでは10μSV/hだと彼女らに話す。
近くの小さな小川で彼の測定器は最高値で5μSV測定した。
彼自身は10μSV/h以下なら無害であるという見解を持つ。
彼女たちの目は輝き始めた。
イランの自然放射線を持ち出して、10μSV/h以下なら心配ない、
とお話しされる方ですね…。この件については、人間が長年かかって順応してきたものと、
突然環境が変わったものとは全く別である、と生態学の先生にお聞きしたことがありますよ。
そして、現在、国の定める除染基準は0.23μSV/hなんですが、
10μSV/hだと、だいぶ余裕がありますね!
福島ステークホルダー調整協議会の事業計画書には、
「ICRPと意見調整のうえ、福島で『心の除染・国際シンポジウムin福島』を開催して、
今後の放射能と向き合うためのメッセージを国内外に発信」とありますが、
どんなメッセージを発信されるか、気になります。
半谷氏が講師として関わっている「家族のリスクマネジメント勉強会」や、
副代表をされている「たむらと子どもたちの未来を考える会」も、
10μSV/h以下だと問題ない、という観点からだと、心配ですね!
ところで、長崎大の高村昇教授が飯舘村で
「10μSV/h以下では子供も外で遊べる」
という説明会を行ったときの映像がNHKで流れたとき、
私は統合本部の合同会見でその件について安全委員会に質問いたしました。
脱ってみる? 第13回(長いけどごめんなさい、中盤に出てきます)。
回答は次のとおりです。
加藤審議官「NHKの番組での高村先生の発言ですが、
私も見ておりまして10μSV/hまでなら大丈夫という所については、
何を根拠に仰ってるのかなあという感想を持ちました」
そして、会見終わりのぶら下がりで、加藤審議官に詳しくお聞きしましたら、
「番組で高村先生の発言を聞いて、ビックリして大急ぎで計算機探して、 ちなみに、この高村昇先生は、現在も福島県の「放射線と健康」アドバイザリーグループの一員です。 福島県の県民健康管理調査検討委員会の第6回の資料にグループ員名簿があります(最後に出てきます)。 この委員会は私も傍聴に行きましたが、山下俊一座長の「福島県民が放射線に関して、 前回の記事で出てきました、福島の方がおっしゃる「2人のMr.100ミリシーベルト」 ****** 他にも、半谷氏のご発言で興味深いものがあったので抜粋。 「量子放射線利用普及連絡協議会」第15回会合・議事メモより。 NHKが報道したNHK追跡!真相ファイル「低線量被ばく揺れる国際基準」についての (へぇ、そんなことがあったのね、原子力関係者は強気ですね!) 私からは「原子力関係者は、マスコミと対立するのではなく、 (ちょっと、流れがつかめませんでした。協力しろ、という本意は、原子力関係者を諫めているのか、 南相馬市での除染を東大の児玉龍彦先生が実施した。放射線量は下がらなかったが、 (うーん、児玉先生はお医者さまで、除染のエキスパートではないものね、といいますか、 ****** 福島ステークホルダー調整協議会主催のピーチプロジェクトを調べていたら、 ****** 今回は、文楽の記事を書きたかったのだけれど、前回の続きみたいなこっちの件を書きました。 【今週の針金】 【マガジン9「脱ってみる?」第49回より】
年の総量を出しましたよ!」
「年100mSV以下だから大丈夫、という考え方なのですかね。
確かあの頃そういう考え方がありましたからねぇ…」/p>
いろいろな情報があると混乱する。なので、これから県として共通の認識を持たせる。
放射線に関する知識を一元化していく。県が定めるアドバイザリーグループを立ち上げ、
各自治体が独自のアドバイザーを持っている場合でも、県のアドバイザーに従ってもらうようにする」と、
けっこう驚愕なご発言で始まったアドバイザリーグループでしたよ!
「放射線に関して共通の認識」「放射線に関する知識を一元化」 は、たびたび口にされてましたよ!
山下俊一氏や田中俊一氏に加え、高村昇氏や半谷輝巳氏など、
「10μSV/h以下では問題ない」とおっしゃる方々が、福島県内の放射線アドバイザーというのは、
なんか、ちょっと怖い気がします。
「すこし気をつけましょう!」とおっしゃる方はアドバイザーにいらっしゃらないのかな?
あ、これが「放射線に関して共通の認識」ということ? 凄い高い値で統一するのか…。
ここで半谷氏は、「福島ステークホルダー調整協議会、AFTC AFTC の活動と福島からの思い」
という講演をされています。その記録から。
毎日新聞の小島さんが主催した勉強会において、
原子力関係者が「NHKに謝罪させる方法をレクチャーして欲しい」と相談した。
マスコミの人たちと一緒に福島の復旧・復興のために協力してほしい」と言った。
その一件もあり、朝日新聞からは、日本記者クラブで講演を依頼された。
それともマスコミをうまく利用しろ、とおっしゃっているのか?
その一件で記者クラブで講演を依頼された、というのも…?)
住民の方々は「こんな偉い先生が、我々住民と一緒になって、汗をかいて、
除染をしてくれた。本当に有難い。」と言って感謝していた。この場合、除染によって、
放射線量は下がらなかったが、住民は不満に思うのではなく、感謝している。
その活動により、放射線量が下がった下がらないの問題ではなく、
意義のある活動であったといえるだろう。
除染して、放射線量が下がらないと、無駄に被ばくしちゃうだけのような気がしますよ?
そして、効果的な除染をやったほうが絶対にいいと思うのだけれど?)
前回の田中俊一氏の放射線安全フォーラムとの共通点が見つかり、思わず長くなってしまいました。
ということは、放射線安全フォーラムも気になるよね、といろいろ見たら、
わ、つっこみどころ満載で大変なので、とりあえず、いったんここで、おしまい。
大好きな文楽のことも近々書きます☆
金メダルは嬉しいけど、セシウムメダルはいりませんねん!