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帰国した「金正日の元料理人」との会食 (辺 真一)

ロンドン五輪が終わった。この二週間、五輪報道一色で他のニュースはややかき消されてしまった感も否めない。韓国の李明博大統領の電撃的竹島上陸も、10年ぶりの日朝赤十字間交渉も本来ならばもっと特筆すべき重大ニュースである。

韓国大統領の竹島上陸は史上初めてのことであり、また赤十字交渉も10年ぶりに再開されたからだ。特に赤十字交渉は、67年も北朝鮮に放置されたままの遺骨収集という日本人自身の戦後処理に関わる問題でもある。

この期間に「金正日総書記の元料理人」で知られる藤本健二氏が、11年ぶりに訪朝して後継者の金正恩第一書記に会ったこともビッグニュースの一つである。

「脱北者」でもあり「背信者」でもあることから北朝鮮ヒットマンの第一の暗殺ターゲットとみられていた料理人が、政治家やマスコミに先駆けて日本人としては真っ先に北朝鮮の最高指導者に会ったというからこれ以上の驚きはない。

思い起こせば、故・金正日総書記は、権力を継承して死去するまでの17年間、初代の金日成主席とは対照的に日本の政治家、報道関係者との会見に応じたことは一度もなかった。日本のマスコミによる「金正日会見」も「金正日インタビュー」も皆無だった。それだけに、金正恩氏直々の招待による藤本氏の訪朝、金正恩会見は衝撃的だ。

二週間の訪朝を終え、北京経由で日本に戻ってきた翌日に藤本氏から電話をもらい、北京からの帰途、日韓の報道陣に多くを語らなかった理由を聞かされた。無事帰還(生還?)を祝って先週末には都内で食事を共にし、長時間にわたって話を聞いた。トレードマークの髭も綺麗に剃られており、何かから解放されたかのようなさっぱりした表情をしていた。

金正恩氏と抱き合っている写真、夫人(李雪柱)と握手している写真、宴会の場で正恩氏の後見人である張成沢国防副委員長と一緒に映っている写真など計8枚を見せてもらった。写真は間違いなく、本物である。

今回の藤本氏の訪朝にはTBSが独占契約を結んでいるとのことだ。NHKや日テレなどその他民放も、インタビュー要請中とのことだが、事前収録をしても、放送はいずれもTBSとの独占契約が切れる8月25日後になりそうだ。

外国からのインタビュー要請も殺到しているようだ。「反北朝鮮報道」で知られる韓国紙「朝鮮日報」は一昨日、「北朝鮮に利用される元専属料理人」との見出しを掲げ、「藤本氏の話が本当だとすれば、北朝鮮はいまだに、藤本氏を活用する価値があると見ていることになる」と書いていたが、面白いことにその「朝鮮日報」傘下の「テレビ朝鮮」ですら、多額の報酬を条件提示し、藤本氏に訪韓し、番組出演を依頼している有様だ。

藤本氏の訪朝について触れた7月25日付のこのブログで「藤本氏の訪朝で以下のような未確認情報が確認できればしめたものだ」として、

①正恩氏が同伴している女性が妹なのか、妻なのか? 子供はいるのか?
②最有力後継者だった兄、正哲氏は今何をしているのか?
③異母兄の正男氏が一時帰国したとの情報は事実か?
④実母、高英姫は2004年5月に本当に乳がんで死亡したのか?
⑤金正日総書記は昨年12月17日に本当に心臓麻痺で急死したのか?
⑥なぜ、三男の正恩氏に後継が決まったのか?
⑦金正日総書記は遺言を残したのか? あるとすれば、その内容は?
⑧太りすぎと言われている正恩氏の健康状態について
⑨肝臓を患っているとされる叔母、金慶喜氏の健康状態について
⑩李英鎬軍総参謀長が突如解任された本当の理由は?
⑪音楽会でミッキーマウスを登場させ、ロッキーのテーマソングを流した理由は?
⑫本当にこれから経済開放、改革を志向するのか?
⑬核実験やテポドンミサイル発射はもうやらないのか?
⑭米国との交渉をどう進めるのか?
⑮伝えられるように正恩氏は近々訪中するのか?
⑯韓国との南北関係をどう進めるのか?
⑰幼年期に過去2度日本を訪れたことのある正恩氏の対日観について
⑱正恩氏は拉致問題をどう考えているのか?
⑲藤本氏の過去の言動を不問にし、平壌に呼んだ理由は?

等など思うまま列挙したが、その大半は確認できた。遅かれ早かれ藤本氏自身から「真相」が語られることになるだろう。

今、言えることは「無事帰国できれば、今後、藤本氏は日朝間の重要なパイプ役となるだろう」との予想が間違ってなかったということだ。

【ブログ「ぴょんの秘話」より】