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消費税政局を仕掛けた小泉純一郎元首相の狙い(藤本 順一)

解散の確約がなければ、自民党は3党合意を破棄するという。民主党政権には失望以外に言葉はないが、だからといってこれには賛同はできない。

国民生活を人質にとるその政局手法は、「生活が第一」の小沢一郎代表と変わらない。あるいは自民党をぶっ壊してしまった小泉純一郎元首相を真似てのことか。聞けば、参院自民党の暴走に谷垣禎一総裁もお手上げらしい。困ったものだ。

野田佳彦首相は消費税増税関連法案の成立後、自民党の望む通り、「近い将来、国民の信を問う」と言っている。加えて今年度予算の執行に憂いなきよう公債法案を成立させての解散であれば、権力委譲に伴う国民生活への影響を最小限に食い止めることができる。いわば、大政奉還、江戸城の無血開城である。それのどこが不満なのか。今の政治に必要なのは比叡山焼き討ちの織田信長ではなく、西郷隆盛であり、勝海舟の大局観である。

「今のようなことを谷垣さんがやっているようではがっかりだ。解散確約を首相ができるのか。ちょっと頭がおかしくなっているんじゃないか」平成の元勲を目指す森喜郎元首相がテレビでこう述べていた。森元首相は9月総裁選に向け、いち早く谷垣総裁の再選支持を打ち出していただけに憤懣やるかたない思いだろう。

ただ、谷垣氏の「頭がおかしくなっている」とすれば、それは参院自民党の強硬派と党内に居場所がなくなった小泉政権の残党どものせいだ。規制緩和による経済成長と行財政改革で財政再建を目指したのが小泉政権だったが、結果は惨憺たるもの。もちろん、彼らは消費税の引き上げに反対である。

しかも、3党合意を主導した谷垣氏が9月の総裁選で再選され、首相のイスに座るようなことになれば、一生冷や飯食いのまま。中川秀直、塩崎恭久両元官房長官や菅義偉元総務相辺りは、世が世ならば自民党を背負って立つ人材だろうが、現実はポスト谷垣として控える石原伸晃幹事長、石破茂元政調会長らに大きく水をあけられ、焦りは募る。そこに絶妙のタイミングで人気者の小泉進次郎議員が「3党合意破棄」の狼煙を上げたものだから、谷垣氏は浮き足立ってしまった。

怯えたのはもちろん、小泉元首相の陰。自民党をぶっ壊してしまった小泉元首相である。仇敵小沢や「みんなの党」の渡辺喜美代表らと手を結んだ谷垣潰しくらいは平気でやりそうだ。それに参院自民党には小泉チルドレンの鞍替え組もいる。党内基盤が脆弱で政局音痴の谷垣氏が「おかしくなった」としても不思議ではない。いつもの、くだらない政争劇である。

【東京スポーツ「永田町ワイドショー」8月10日より】