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野田はもちろん、谷垣も本音は解散先送り(藤本 順一)

国会は連日、解散総選挙の時期をめぐり与野党が厳しい綱引きを演じている。当面の焦点は言うまでもなく、野田佳彦首相が政治生命を賭けた消費税増税関連法案の参院採決の時期だ。

一時、自民党は採決前に衆参それぞれに内閣不信任決議案、首相の問責決議案を提出する構えを見せていた。だが、タッグを組む公明党は山口那津男代表が24日の記者会見で「成立を阻むような、合意を覆すような動きは国民に対して十分な説得力を持たない」とこれを否定したことで、野田首相を早期解散に追い込む有力な武器を一つ失ってしまった。

山口代表はまた、法案成立後の問責決議案提出にも「その後審議にも影響を与えるから、様々な状況をよく見極めながら対応を考えていきたい」と述べており、自民党との微妙な関係を漂わせてもいる。

これに意を強くしてのことかもしれないが、民主党の城島光力国対委員長は同じ日、自民党に対し、消費税増税法案の成立を当然のこととしつつ、今国会での成立が不可欠となる赤字国債発行を可能にする特例公債法案を週明け2日に衆院を通過させる意向を示した。

加えて野田首相の口からは、補正予算案の編成や環太平洋パートナーシップへの参加、憲法解釈の見直し、はては尖閣列島国有化にいたるまで、あたかも解散総選挙の先送りを伺わせるような発言が相次ぎ、自民党の神経を逆なでした。

たまりかねた自民党は翌25日、参院の税と社会保障一体改革と特別委員会で山谷えり子議員が、消費税関連法案の採決先送りを意図するような民主党の姿勢を質したものの、野田首相は「決して先送りしようという考えはない。特に指示したことはない。理事間で日程を決め、環境が整えば採決ということだと思う」と述べ、何食わぬ顔だ。

しかしながら、野田首相が不人気の消費税増税法案成立直後の解散総選挙を嫌っているのは誰の目にも明らかなことだ。

一方の自民党も共犯者であれば、表向き早期解散を訴えてはいても本音はまた別だ。本欄で度々指摘してきたように、今国会会期中に解散総選挙に追い込むとしていた谷垣総裁ですら、9月の自民党総裁選の再選が保証されさえすれば、これ幸いと早期解散の旗を下ろすはず。事実、自民党内の空気はそうなりつつある。

かくして解散総選挙の時期は大手各紙が描く早期解散の希望的観測は裏切られ、早くても秋の臨時国会会期末に先送りとなるのが客観情勢である

【東京スポーツ「永田町ワイドショー」7月27日より】