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消費税増税の成否を握る参院自民党(藤本 順一)

国会は11日、参院本会議で税と社会保障の一体改革関連法案の主旨説明と質疑を行った。この中で野田佳彦首相は米国の故ロバート・ケネディー元司法長官の言葉を持ち出し「幻想なき理想主義。この言葉が今、大変胸に染みている。理想だけを追いかけていたのでは政策遂行できない。現実だけを追いかけていたのでは政治に涙、ロマンがない。必要なのは幻想なき理想主義だ。社会保障と財政の持続可能性に対する危機を克服すること、決められる政治を作り上げることは、私が政治家を志した理想と大きく重なる」と述べた。

その「幻想なき理想主義」の発露が税と社会保障関連法案の3党合意と小沢切りだった。

もっとも、野田首相の「決められる政治」はまだ志半ば。ねじれ国会、参院自民党は小沢グループ以上に厄介な存在である。さらなる妥協が強いられよう。

さっそく自民党は石井準一議員が質問に立ち、最低保障年金制度の創設など民主党が掲げるマニフェストについて「3党合意で不可能になった」と撤回を求めた。

これに対して野田首相は「合意はいずれかの党の政策を否定するものではない」と述べ、今後の議論については「社会保障制度改革国民会議」に委ねる考えを示した。

だが、これでは参院自民党が納得しない。本会議に先立ち行われた同党の参院議員総会で脇雅史国対委員長は「衆院は玉虫色で通過したが、180度違う法文解釈が存在するはずがない」と述べ、聞き入れなければ法案採決に反対する構えを見せている。

脇氏はまた、民主党内に留まる鳩山由紀夫元首相ら増税反対派の処遇についても言及、「野放図に放っておくことは信義の問題として許せない。きちんとできないなら採決なんかできない」と息巻いている。

あれれ、自民党の谷垣禎一総裁が署名した3党合意の玉虫色決着を参院自民党が蒸し返すというのなら、党内野党化した鳩山元首相と程度変わらない。来夏に参院選挙があるから、ここぞとばかりに参院自民党の存在感を国民にアピールしたいのだろうが、むしろ逆効果だ。自民党の政権復帰は望むところだが、先々が思いやられる参院自民党である。

 

東京スポーツ「永田町ワイドショー」2012年7月13日掲載