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窮地に立たされた朝鮮総連(辺 真一)

火水と、大分に行ってきた。初日は大分市内で、二日目は臼杵市で大分合同新聞社主催の講演があった。

演題はいずれも「どうなる金正恩体制、どうなる日朝関係」。直前に金正恩氏の「隣の女性」が騒がれていたので、そのことから話題にせざるを得なかった。

妹なのか、夫人なのか、それとも、別人なのか、韓国情報当局も依然として割り出せないでいるようだが、判明するのは時間の問題のような気がする。そもそも、夫人であろうが、なかろうが、たいした問題ではない。結婚していれば夫人がいないのがおかしい。それほど大騒ぎするほどの話ではない。夫人ならば、今回、お披露目しただけの話ということになる。

それよりも朝鮮総連中央本部の建物が差し押さえられ、競売に掛けられるとのニュースのほうがはるかに関心を引き付ける。

全国13の朝鮮信用組合(朝銀)の不良債務(2000億円)と朝鮮総連中央本部との関係を問題にしたのが、前原誠司民主党政調会長である。2002年4月の国会で「朝鮮総連が組織としてこのような朝銀の焦げ付きを起こしたならば、債権回収の矛先は朝鮮総連に、その資産管理団体に向けなければならないのでは」と追及していた。 それが、10年目に、それも民主党政権下でとうとう現実のものとなった。

裁判の結果、整理回収機構(RCC)は破綻した朝銀から合計1,533億円分の不良債権を引き継いだが、このうち約41%にあたる627億円が事実上、総連への融資であったということとなった。

総連中央本部は地下2階、地上10階。土地2,390平方メートル(700坪)、延べ床面積1万1700平方メートル。物件の鑑定額は35億円前後で建物を競売にかけても落札額は20億円程度が相場だと見積もられている。仮に25億円前後で落札されたとしても、焼け石に水で、朝鮮総連は組織が存在する限り、600億円以上をRCCに返済しなければならない。滞納すれば、利息が膨れる一方だ。

朝鮮総連が被った負債の一部は、本国(北朝鮮)に流れたとの疑惑も指摘されているが、ならば、朝鮮総連から恩恵を被った本国が救済に乗り出すべきだが、肝心の母体の本国が借金まみれで、火の車だからどうしようもない。朝鮮総連は本部を明け渡さざるを得ないだろう。

先月、韓国政府は2000~2007年の間、北朝鮮に対して行った計7億2000万ドルの食糧借款(年利率1%の利息を含めると計8億7500ドル=約696億円)の1回目の返返済額(583万4372ドル=約4億6千6百万円)の支払いを求めたが、韓国輸出入銀行が督促しても何の反応もない有様だ。

北朝鮮の債務未払いは韓国だけでない。ロシアにもソ連時代の借金が110億ドル(約8800億円)あったが、これは先月の交渉で、なんとか9割カットしてもらったが、それでもまだ約12.2億ドル(約976億円)も残っている。

韓国やロシア以外にも、欧州、そして中国にも多額の負債がある。中国は発表しないので、額は不明だが、欧州だけでも負債は45億5千万ドル(約3600億円)に達する。

日本への債務も未納のままだ。その額は約18億ドル(1,440億円)を超えている。このうち貿易債務が900億円。

北朝鮮は日本から1995年に50万トンの食糧支援を受けたが、このうち35万トンは借款で、利息10億円合わせて総額66億円。ところが、1996年にたった1回、利息8千4百万円を払っただけで、その後は滞納が続いている。滞納が16年も続いているわけだから金利も相当膨らんでいることだろう。

対韓債務が約8億7千万ドル、対露が12.2億ドル、対西欧45億ドルをそして対日債務がおよそ18億ドル。対中債務を除いても、約83.9億ドル(6712億円)と、北朝鮮は総連の債務(627億ドル)の約10倍も抱えているわけだから、これでは、朝鮮総連を見捨てざるを得ないだろう。

北朝鮮に限らず、どの国も例外なく、対外債務は抱えている。4千億ドルと莫大な対外債務を背負っている韓国も含めそれでも支払い能力があるから、借金ができるのだろう。

国際金融機関から「デフォルト国家」の烙印を押された北朝鮮は約束を守らないことがすべての負の根源だ