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北朝鮮の経済に未来はあるか(辺 真一)

七夕の週末は、名古屋で金融機関主催の講演会があった。

七夕は、日本では織り姫星と彦星が天の川で出会う伝説で知られているが、韓国では織女座と牽牛座の二つの星を引き合わせるためカカササギが集まり、銀河の上に橋をかける。「烏鵲橋」と呼ばれるこの橋は、韓国版の「ロメオとジュリエット」とも言われる「春香伝」に登場する。

いずれにせよ、七夕の日は、伝説発祥の地、中国でも、韓国でも、また欧州でも縁結びの日というか、めぐり遭いの日というか、願い事が叶う日であることには変わりはない。最も近い隣国、隣人との友好、親善、共存、共栄の橋を掛けたいとの願いを込めて、「日本と朝鮮半島の将来」を演題に約1時間語ってきた。

日本と朝鮮半島の将来は「ブラックホールの国」と言われる北朝鮮がカギを握っている。北朝鮮の変貌なくして、日本と朝鮮半島の将来も未来もないと言っても過言ではない。北朝鮮が少なくとも中国やベトナムのように豹変すれば将来に希望を持てるが、現状維持のままだと、楽観は許されない。

昨日、韓国銀行(中央銀行)は「2011年北朝鮮経済成長率推定結果」を発表していた。北朝鮮の実質国内総生産(GDP)が前年比0.8%上昇したとの分析だ。2年連続で続いていたマイナス成長が0.8%ながら、プラスに転じたようだ。

これをもって北朝鮮の経済展望が開けたとみるのは錯覚だ。事実、2008年には3.1%のプラス成長があったのに、わずか1年でマイナス0.5%成長に転落したからだ。

韓国銀行の統計では、昨年の北朝鮮の国民総所得(GNI)は32兆4000億ウォン(約2兆2616億円)。1人当たりの国民総所得は133万ウォンで、韓国(2492万ウォン)の19分の1の水準にとどまっている。

先代の金正日総書記は初の訪中後の1984年、誕生日(2月16日)の日に開いた党中央委員会責任者協議会で「人民生活を高めるために」と題した演説を行い、「人民生活を向上させることこそが労働党活動の最高原則でもある」と強調したうえで祖国統一のためにも経済戦争で韓国を圧倒するよう呼び掛けたが、28年経った今日、圧倒するどころか、圧倒される一方だ。

前年の1人当たり国民所得は124万ウォンで、世界210カ国・地域のうち194番目だそうだ。こんな有様で経済大国がどうのこうのとは、ちゃんちゃらおかしい。

北朝鮮の貿易規模は63億2000万ドル(約5033億円)で、前年に比べ21億4000万ドル増えたとのことだが、このうち対中貿易はなんと53億3千万ドルも占めている。160か国の国々と国交を結んでいるのに中国以外の国々との貿易は合わせても10億ドルにも満たない。

北朝鮮の経済的孤立は、自業自得によるところが大きいが、国連主導の経済制裁が影響しているのは間違いない。だからこそ、核とミサイルなどの大量破壊兵器を破棄し、国際社会の一員となり、ベトナムのような改革、開放の道を歩むべきだ。

北朝鮮が核を放棄し、米国と国交を正常化し、WTO(世界貿易機構)に加入すれば、韓国の現代経済研究院の報告書(08年7月1日)によれば、北朝鮮の対外貿易は19倍に跳ね上がるとのことだ。63億2千万ドルの19倍ということは、1200億ドルになる。韓国の昨年の貿易量が1兆753億ドルだから、12~13の1分にまで差を詰めることができる。まして、486兆円相当の地下資源(レアメタル)を有しているわけだから、資源のない韓国に追いつき、いつの日か、圧倒することも不可能ではない。

問題は、金正恩体制が改革、開放の決断ができるかにかかっている。

金総書記は1999年の元旦、党中央委員会責任者らを集め「改革、開放の嵐に引きずられてはだめだ。開放、改革は亡国の道だ」と訓示していたが、金正恩氏がこの「遺訓」を継承する限り、この国に未来はない。