ノーボーダー・ニューズ/記事サムネイル

【NLコラム】東京都の食料自給率は1%(高野孟)

2012年6月26日 高野孟《新聞はベタ記事が面白い》No.003

6月25日付赤旗が、農水省のまとめによる都道府県別の食料自給率を採り上げ「自給率100%超は6道県」と報じている。要領の悪いまとめ方で、しかも平成22年度概算値であることを明示していない下手くそな記事なので、農水省HPで元データを当たった。それによると、全国のカロリーベース自給率は対前年度1ポイント減の39%だが、都道府県別に見ると、100%超は北海道173%、秋田171%、山形138%、青森119%、岩手111%、新潟101%の6道県で、昨年と同じ順位だった。

それに対して自給率ビリの御三家は、東京都1%、大阪府と神奈川県2%で、これもいつもと顔ぶれが同じ。神奈川はずっと3%=3位で来ていたが、初めて大阪と同率2位に落ちた。大都会の脆さを端的に示す数字で、要するに大都会は普段でもカネで買う以外に飯が食えないし、ましてや大災害に遭って流通が途絶すればたちまち飢えるということである。しかも、この数字は、仮に全国的な自給率が100%になったとしても、変わることがない。大都会に暮らすとはそういうことだと知っておく必要がある。

ちなみに、自給率の計算には、よく用いられるこの「カロリーベース」と、もうひとつ「生産額ベース」がある。生産額ベースで見ると、全国的な自給率は69%で、都道府県別では上記6道県に加えてさらに15県が100%超に入る。東京は4%、大阪は5%、神奈川は13%である。実はカロリーベースで自給率を測るという方法を採用しているのは日本だけで、それはたぶん、カロリー摂取量の確保を重視していた貧しい時代の名残であるらしい。メタボ検査だダイエットだと言っている今の時代にカロリーベースで測るのは意味不明なのだ。生産額ベースで見ると、カロリーが低いかゼロかの野菜や果物、金額の嵩む畜産物が大きな比重でカウントされるので、自給率は高まる。

農水省は、両方の数字を発表していながら、食料自給率が危機的であることを語る時にはカロリーベースの数字だけを持ち出す。私は生産額ベースのほうを優先して、「日本の食料自給率は69%だが、もうちょっと頑張って100%を目指しましょう。出来れば農産物輸出も推進して100%超を達成しましょう」と言うのが正しいと思うのだが。

★原資料:http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/zikyu_10.html

《高野孟のTHE JOURNAL》
「まぐまぐ!」でメルマガ登録受付中!
http://www.the-journal.jpからどうぞ