【NLコラム】李登輝元総統の健康が心配(高野孟)
《新聞はベタ記事が面白い》No.002
6月23日付「インタナショナル・ヘラルド・トリビューン」に「胸部の痛みで元指導者が汚職裁判を欠席」と題した台北発AP電のわずか17行の記事が載っている。見出しに人名がないので見落とすところだったが、私が尊敬する李登輝=元台湾総統の話。胸部の痛みのため22日の汚職事件の法廷審理に出席しなかった、と。
彼のスポークスマンによると、元総統は数年前の心臓手術以後、似たような症状に何度か見舞われており、この日は法廷での弁論を準備中に具合が悪くなった。元総統は現在89歳で、昨年にも結腸の悪性腫瘍を切除する手術を受けている。
元総統が昨年6月に、2000年に退任するまでの4年間に国家安全局の裏金から6億2700万円相当を自分の退任後の事務所となっている「台湾総合研究院」に流し一部を着服したとして公金横領の罪で最高検に起訴されたことは、当時小さく報じられた。その時は、どうせ政治謀略に決まっている、元総統が馬英九政権に歯に衣着せぬ批判をするので、政権側が嫌がらせをしているんだろう、くらいに思って、さして気にも留めなかった。が、これほど健康に不安があるのでは謀略との戦いもままならないだろう。ちょっと心配だ。
私は07年2月に台湾を訪れた折に、まさに今裁判で問題になっている研究院の事務所に元総統を訪ね、親しくお話しさせて頂いた上、色紙まで頂いた(写真参照)。家宝にしている。