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自民党政権復帰は大連立が手っ取り早い「永田町ワイドショー(6月20日号)」(藤本順一)

後半国会、最大の焦点だった消費税増税関連法案は民主党と自民、公明両党の修正合意を受け、会期末ギリギリの21日に衆院本会議で採決される。民主、自民両党内にはなおも不満が残るが、可決はまず動くまい。

一体改革するはずだった社会保障制度の大改革は残念ながら成らなかったが、ものは考えようだ。消費税増税だけを取り上げれば、国民の多くが反対するのも当然だが、強引な制度改革はかえって社会の混乱を招くことになる。消費税の引き上げ実施時期までに、国民の多くが納得できる結論を出してもらえればいい。

教科書的になるが、税と社会保障の一体改革を分かりやすく言えば、現在の硬直化した国家財政構造を見直すことだ。消費税増税法案が成立したからといって、歳出構造をあらためなければ、税収増も財政再建も画に描いた餅になってしまう。

周知のとおり、民主党は「子ども手当」や「高校無償化」、「農家の戸別補償」など、国民への直接給付の空手形を切りすぎた。かといって旧来型の無駄な公共事業が復活してもらっても困る。少ない予算で社会保障と景気対策にどう折り合いをつけるのか。野田政権は来年度予算の編成に腰を据えて取り組むことだ。

そこで注目しておきたいのが、国会の会期延長幅である。民主党は税と社会保障の一体改革の参院審議の他、赤字国債発行に必要な特例公債法案など重要法案の成立を図るため8月までの大幅延長を考えているようだ。

これに対し自民党は18日、党本部の会合で「民主党の社会保障などの矛盾を暴き出し、積み重ねて衆院解散を勝ち取る」と述べた。8月解散を念頭に置いたものだ。

今国会会期中に野田首相を解散総選挙に追い込み、政権復帰をはたすことは自民党の基本戦略である。そうなれば、谷垣総裁は秋の自民党総裁選で再選され、首相の座が転がり込んでくるわけだ。

だが、それでも民主、自民両党の攻守入れ替わるだけで、ねじれ国会の現状は変わらない。決められない政治が続くだけだ。

ならば、税と社会保障の一体改革で積み上げた修正協議のテーブルを生かし生かし、このまま民自公の三党で来年度予算の編成をやる手はある。自民党は労せずして政権に復帰できるし、そうなれば谷垣総裁も再選をはたせる。政治の安定には、今取り得る最善の選択肢なのだが。