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ミサイル発射台の輸出で見えた中朝関係(辺 真一)

6月14日(木)

昨日から中国が北朝鮮に長距離弾道ミサイルの発射台車両を輸出していたことが問題となっている。この件について中国外務省は「木材運搬用として輸出したもの」と弁解しているようだ。民需用に輸出したところ、北朝鮮が勝手に軍需用に転用したと言いたいのだろう。本当だろうか?

確かにその可能性はないとは言えなくもない。手袋も、帽子も軍人に転用されれば、軍手、軍帽ということになる。中朝の昨年の貿易量は56億ドルに達しているが、そのうち中国の対北輸出は、31億7千万ドル。中には軍需用に転用されたものも相当あるだろう。

しかし、輸出した車両が、国連が反対するミサイルの発射台に使われていたわけだから事は重大だ。中国は国連安保理では「ミサイル発射反対」の決議や声明に署名していたわけだから、これは明らかに国連の制裁決議への違反である。では、なぜいずれはばれることを中国はやったのだろうか?また、なぜ、北朝鮮も先の軍事パレードであえて公開したのだろうか?

昨日、都内のホテルで開かれた全国通運業連合会での講演で中朝関係についていつもより時間を割いて触れたが、その際「北朝鮮が中国のミサイルを脅威に感じてないように中国もまた北朝鮮のそれを脅威には感じてないどころか、むしろ黙認しているようだ。その理由は、単に友好関係にあるということではなく、中國は北朝鮮を31省のⅠ省と位置付けているからだ」と断言した。簡単な話が、国境を接している北朝鮮は中国からすれば東北4省(黒龍江省、遼寧省、吉林省、北朝鮮省」の1省扱いに過ぎないということだ。

北朝鮮のミサイルは尖閣諸島問題で対立を深めつつある日本や東シナ海で覇権を競っている米国に向けられているわけだから、極論を言えば、中国にとって北朝鮮のミサイルは日米に対する牽制、あるいは防波堤にもなっている。

日本政府は、中国が北朝鮮への支援を止めるよう、強いては中朝関係に楔を打ち込もうと、今回の「ミサイル発射台情報」をマスコミにリークしたが、日本が中国との間で尖閣諸島の問題を抱えている限り、沖縄に米軍を駐屯させ、台湾有事に備えている限り、中国は今後も北朝鮮の軍備増強を放置するだろう。