国会事故調で明らかになった菅元首相の今後するべきこと(日隅一雄)
昨日、国会事故調で菅元首相から参考人としてての聴取がなされた。会場に行ったところ、海外を含む多くのマスメディアが詰めかけており、関心の高さがよくわかった。問題は、関心がどこを向いているかだが…(苦笑)。気を取り直し、重要だと考えたことを紹介します。
まず、菅元首相が、保安院や東電から情報が上がってこない状況、そのような状況の中で東電が撤退を言い出したことで、東電本社に法律にはない統合本部を設置し、ようやく、情報が入るようになってきたことを正直に述べたことはよかったと思う。
また、最後の短いスピーチで、外国人などを入れた厳しい調査をすること、脱原発を進めるべきであることを明確に述べたのも、教訓にするべきだ。
残念なのは、菅元首相がそこまで現場の担当者からの情報が上がってこなかったことを問題視するならば、そのようなことが二度と起きないように、自らより詳細な事実を述べるべきでしょう。保安院、東電の誰がどのような責任を負っていたにもかかわらず、その責任を果たさなかったこと、さらに、果たさなかった原因、これらを明らかにすることに協力することが、百万回謝罪の言葉を重ねるよりも重要なことだ。
そういう意味では、この日、最後に、菅元首相が、東電に乗り込んだときの「叱責」について、質問が繰り返されたのは、少し残念だ。
あれだけの事故で情報が上がってこない状況があり、訳の分からないまま撤退する、と言われれば、「ちょっと待て」という怒りを感じるのは当然だし、それに怒りを感じることができないような人にはリーダーになってほしくない。
そもそも、東電の記者会見をみてもらえば、分かるように、東電幹部は甘やかされている。会長や社長への記者の質問はご丁寧で、これだけの事故を起こした当事者の責任者とは思えないようなものだ。
3月16日の武藤副社長の記者会見は終わり際に少し大きな声でのやりとりがあった。というもの、武藤氏が質問に正面から答えなかったからだ。
この1時間10分あたりからを見てもらえると、マイクなしでの発言が相次いでいる。私も前に詰めよって答えるように迫った。
が、記者がたくさん出てきて武藤氏を取り囲むような状態にまでは至らず、彼は会見場を平穏に退出した。
この様子を朝日新聞の奥山記者は、「東電でひっきりなしに開かれてきている記者会見がこのように荒れた状態で終わるのはおそらく初めてと思われる」と自著(「ルポ 東京電力 原発危機1カ月」)で説明している。
あれだけの事故を起こしたのだから、常にこの程度の荒れぐあいになっても不思議はないのに、そうならないのは、いかに広報が根回しをし、幹部に気づかないようにしているかということの裏返しだ。
そういう彼らが「叱責」されたから萎縮したなんて、腹が痛い。子供じゃないんだよ。大企業の幹部だよ。
事故調は、くだらない「叱責論争」をするよりは、具体的な事実関係を聞くべきだったと思う。
菅元首相の今後の調査への協力を期待したい。