正恩氏への経済開放への期待(辺真一)
静岡県の焼津に行ってきた。駿河湾に面した絶景の地に会場となるホテルがあったので、しばしの間、情緒豊かな旅の歓びに浸ることができた。
講演は焼津及び藤枝市の中小企業経営者らが対象。主催者から「いつもより多いんですよ」と言われていたが、会場は250人近くでほぼぎっしりだった。
演題はこの日も「北朝鮮問題」だが、金正日総書記の急死で政権が替ったこと、後を30歳にも満たない若い息子が継いだこと、そして半年もしない間に「ミサイル=衛星」を発射したことなどで、関心が高まっていた。
帰京すると、来日中の金大中政権下で統一相だった朴在圭・慶南大総長が毎日新聞とのインタビューで金正恩新体制について「金正恩第一書記が『顧問団』の助けを借りて自信ができた段階で北朝鮮式改革・開放に乗り出す可能性がある」と見通していたとの記事を目にした。
昨日、講演の最後で「金正恩氏が父親のように実権を完全に掌握した暁には経済に思い切って舵を切る可能性がある」と述べたが、韓国にも同じような考えを持っていた人がいたとは。
但し、実権を完全に掌握するということは、軍部を抑えることを意味する。極論を言うなら、二度と核実験を行わず、「先軍政治」の看板を下ろすことを指す。軍部の支持なくしては一日も持たない正恩氏にそれができるかどうかだ。
北朝鮮をベトナムや中国のような経済開放の道に誘導できるかどうか、鍵を握っているのは金正恩氏をトロイカ体制で支えているファミリーの張成沢・金慶喜夫婦とその弟分である出世頭の崔竜海政治局員常務委員の3人と、日米韓3か国の対応にもかかっているようだ。