米国の関心は、ミサイルよりもウラン爆弾の阻止(辺真一)
奈良新聞主催の会員向け講演会。演題は「どうなる金正恩体制、どうなる日朝関係」。北朝鮮が当面、核実験をやらないことがわかったので、今後の展開について語った。
それにしても、米国もこと、北朝鮮については情報閉鎖国である。
北朝鮮が数週間前、即ち5月初旬に核実験を自制する意向をニューヨークチャネルを通じて伝達していたのにそのことを一切伝えなかった。
北朝鮮の口約束は信用できないからと言えばそれまでだが、核実験の「Xデー」を競って報道していた韓国や米国のメディアは振り回された形となった。
そう言えば、4月の「衛星=長距離弾道ミサイル」発射も、昨年から米朝協議の場で北朝鮮が米国に事前通告していたことも北朝鮮が公言するまで公にされることはなかった。
ミサイル発射の一時凍結を約束した3月29日の米朝合意後に北朝鮮が突如、「衛星」打ち上げを発表したことから日韓など関係国は大きな衝撃を受けたが、事前通告されていた米国にとっては意外でもなんでもなかったということだ。
対米交渉の責任者である金桂寛外務第一次官が発射前にカウンターパートナーであるデービース国務省北朝鮮担当特別代表にミサイル発射後の事態収拾のための協議を要請する手紙を出していたことも、それを受ける形で発射一週間前に、米国家情報長官室傘下の国家不拡散センター所長を務めるデトラニ元朝鮮半島和平担当大使とホワイトハウスのサイラー国家安全保障会議(NSC)北朝鮮担当官の二人が極秘訪朝していた事実も数日前に情報が漏れるまで一切伏せられていた。
米国は北朝鮮に対して「北朝鮮が核実験をすれば、圧力と制裁をさらに強化する」と警告を発し、北朝鮮もまた「米国が圧力と制裁に固執すれば、自衛的立場から対抗措置(核実験)を取らざるを得ない」と米国を脅しているが、米朝間ではすでに核実験を自制することで協議を再開することで合意しているのかもしれない。
北朝鮮がミサイルを発射してはならないとの国連決議、それも3度(「1695」「1718」「1874」)も違反して長距離弾道ミサイルを発射したにもかかわらず、貿易会社2社と銀行1行の制裁だけで妥協した理由もこれで明らかだ。
要は、米国はウラン爆弾の開発、実験の阻止を最優先しているということなのかもしれない。