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ギリシア人は事態が分かっていないお気楽民族なのか?!(日隅一雄)

ギリシアで、連立政権が発足されず、再選挙となることに関して、大手メディアは、ギリシア市民が財政緊縮政策に反対し、これまでどおりの生活レベルを維持しようとしているという批判を加えている。ギリシアの財政再建のために欧州各国が負担をしているのに、甘い、というわけだ。果たして、ギリシア市民は、本当に他国のことを考えないお気楽民族なのだろうか?

ここで、イエス、とするならば、大手メディア、それを操る官僚の思うつぼだ。

この問題について、日本とギリシアのどちらの市民が真剣に考えているか、を考えれば、そんな簡単な話ではないことは当たり前だ。

ギリシア市民の支持を集めた第2党急進左派連合(SYRIZA)は、確かに、党首であるアレクシス・ツィプラス(Alexis Tsipras)の魅力も支持を集めた原因ではあるが、その公約に注目する必要がある。基本的には、急進左派連合の支持者は、その公約の実現を望むために、支持をしているはずだからだ。

主な公約は、NATOからの脱退とNATO基地の閉鎖、対外債務の返済の猶予、民営化を元に戻す、銀行の国有化、消費税を廃止し、富裕層への課税率を75%とする、というものだ(ロイター配信の英文記事※1)。

※1 http://news.nationalpost.com/2012/05/14/greeces-most-powerful-man-former-student-radical-holds-the-cards-in-athens/

この公約があってこその支持だということをご存じでしたか?日本では、少なくともテレビではほとんど報道されていないように思う。

現在の日本での実質的主権者である官僚にとっては、軍をなくしたり、富裕層への課税率を高めたり、なんと、消費税をなくすなんていう主張を市民が支えている国が欧州にあるなんていうことが分かったら、富裕層への課税率を低くしたままで、消費税を増税する日本の案がいかに不当なものであるかが、ばれてしまう。

ことは、ギリシアにはとどまらない。フランスでオランド社会党政権が成立しましたよね。この公約についても、日本では、閣僚数の男女同数などが報道されている程度だが、もっと重要なものがたくさんある。

緊縮財政からの脱却を基本に、①「ユニバーサルバンキング」型の仏銀行業界の改革(リテール事業と投機的事業の分離)、②金融取引税を導入、銀行の利益に対する税率を15%引き上げ、③アフガンからの撤退、④6万人の教職員増員、⑤15万の政府関連職の創出などだ(※2、※3)。

※2 http://blog.goo.ne.jp/yampr7/e/0a3ffd5e455e5e3aec677e72dc3a67c9(4つに分かれています)

※3 http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPTK813947120120507?rpc=123

 

こちらも、日本では、富裕層への負担を増やし、軍の活動を少なくする、などの方向の政策がとられることをきちんと報道することはなく、財政緊縮政策からの転換は、経済危機を招くという脅しのような報道がされるだけだ。

ギリシア人はもちろん、フランス人も、真剣に自分たちの行く末を考えた上での結論だ。

新自由主義からの転換の萌芽が欧州で育ちつつある事実を共有しましょう!