郡山「小中学校のホットスポット」は今こうなっている(おしどりマコ)
郡山市立の小中学校における高線量といわれる箇所(いわゆるホットスポット)について、郡山市や郡山市教育委員会から発出された文書類について情報開示請求をしていたところ、開示された文書をここに公開する。(福島県A氏提供)
郡山市の公立の小中学校は、昨年度まで屋外活動を制限しており、1日3時間であった。それが今年度から解除され、その判断の根拠となったのは、
① 除染が進んで、市内の小中学校の校庭の平均線量が0.2μSV/h以下になったこと。
② ガラスバッジで児童の積算線量を数回計測したが、それが低下してきたこと。
この2点である。
筆者は郡山市の教育委員会に取材をしたが、平均で0.2μSV/h以下になったのが判断の根拠か、と確認のため尋ねると、
「そりゃ、平均なのでそれより高いところももちろんありますよ!」と返されたことを付け加えておく。
ちなみに郡山市の公式HPに発表されているデータでは、平成24年7月24日時点で最も高い小中学校の校庭の線量は地表から100㎝で0.43μSV/hである。
平均で判断するのではなく、細やかな対応が必要なのではないだろうか。
そして、判断基準の②について、ガラスバッジで計測した児童のち、積算線量が0.5mSVを超えた児童の全ての線量と件数も開示されたので、いずれ公表したい。
郡山市の公立の保育園での屋外活動制限は、0~2歳までの乳児で1日15分、3歳~就学前の児童は1日30分である。
保育園の屋外活動制限は昨年度に引き続き、今年度も継続して運用されている。郡山市の教育委員会保育課に確認した。
つまり、現時点で、一日の屋外活動が15分、30分と制限されているのである。
(このあたりは、3月の記事になるが、筆者の連載しているWebマガジン、マガジン9「脱ってみる?」も参照されたい。「ふくしま集団疎開裁判の件。郡山は今も屋外活動制限中。」
http://www.magazine9.jp/oshidori/120321/index.php)
市内の小中学校の校庭の「平均」線量が0.2μSV/h以下になった、ということだが、校庭以外の排水溝、生垣、側溝など高線量のところは校内にも多々存在する。
このような校内の「ホットスポット」に関する文書で開示されたものを公開する。
学校職員は通常の職務に加えて負担が増えることと思う。そのことに配慮してかもしれないが、しかし、この文書の「調査個所」にあるこの指示には疑問が残る。
『下記の場所で線量が高いと思われる箇所を各校で1か所選定し、放射線量を調査票により報告願います。』
もちろん、くまなく測定し、最も高い箇所の線量を報告する学校もあるだろうが、そうするかどうかは測定者にゆだねている。
どういうところが線量が高くなるか、放射性物質がたまりやすいか、具体的にアナウンスが無いまま、「高いと思われる箇所を1か所選定」なのである。
せめて、「高いと思われる箇所を10か所測定し、その最も高い1か所を報告」ではどうだろうか。1回の測定には時間がかかるが、週に1回の報告、手分けして校内のホットスポットを丁寧に測定することは難しいのだろうか。
調査票は次である。
続いて、3月19日にホットスポットの調査の追加の文書が出る。プールに関するものである。
ホットスポット調査票は改訂版となる。
関連として、郡山市のプールの除染レポートをリンクさせておく。
「小・中学校プールのモデル除染結果報告5月25日」
除染後、最も線量が高かった例は、薫小学校のプールののり面、地表1㎝である。
除染前2.93μSV/h → 除染後0.65μSV/h
(のり面とは、プールサイドの周り、盛り土などをしている部分である)
プール授業の開始にあたっての、保護者への通知文(平成24年6月5日付け)も気になる部分がある。
- 『 風の強い日や雨などの天候を考慮して実施するとともに、着替えや準備運動は体育館や教室等で行います。
- プールサイドでは、運動着やバスタオル等を身につけ、肌の露出をできるだけ避けるようにします。』
プールサイドのコンクリ面は荒く、放射性物質が入り込むと高圧洗浄機でもある程度までしか低減できないという。
なので、いわき市の小学校では、プールサイドに、22mmの鉄板を敷き詰め、人口芝で覆い、プール授業を始めているそうだ。
(http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/07/18/kiji/K20120718003700920.html)
衣服を身に着けない、水着の状態だとより放射性物質の影響を受けやすい。
なので、郡山市では、着替えや準備体操は教室で行い、プールサイドでは運動着やバスタオル等を身に着け、肌の露出を避ける、という通知が出されたのであろう。
気になるのはこの一文である。
『水泳の授業を希望しない児童生徒 病気等の理由により水泳の実技を行わない場合と同様の扱いとし、知識・理解、興味・関心、思考・判断等の要素を十分に考慮した上で総合的に評価します。』
プールサイドで肌の露出を避けたり、高圧洗浄機で除染するような状況でありながら、それでも不安があるので、やはり水泳の授業を避けたい、という選択肢は存在しないのだ。病欠と同じ扱いでいいなら、プール授業を避けてもいい、ということか。
4月17日にはこういう文書が出る。
ここで気になる一文は、『3.0μSV以上の数値が確認された箇所については写真を添付』である。そのような高い場所が校内で存在するのだろうか。ちなみに、国(環境省)が示す除染基準は0.23μSV/hである。特別に報告する箇所の線量として3.0μSV/h以上、という区切りは高くはないだろうか。
これ以降の調査票は次である。
このような文書も出てきた。
敷地内のホットスポットの現地調査についての文書だが、調査員として、『別紙一覧表の指定業者及び教育委員会職員』となっている。この資料である。
担当責任者は全て、除染業者である。教育委員会職員ではないのだ。
ホットスポットの線量を測定することについて、業者を責任者にしてもいいものだろうか。除染前、除染後の線量の測定の責任者は、除染業者ではなく、学校関係者がすべきではないだろうか。
線量の低減率が除染の成果だが、線量測定の責任者が教育委員会職員、学校職員ではなく、除染業者というのは疑問である。
最後にこのような文書も開示された。
今回、開示された文書は以上である。
ホットスポットについての全ての文書類という請求のため、除染に関するものは開示されていない。
これからも原発事故後の状況に注視していきたい。