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中国に「パン食革命」もたらす日本の食文化(高野孟)

《新聞はベタ記事が面白い》No.006

日本で出ている日本語の新聞「中国経済新聞」7月15日号の小コラムで同紙の発行人兼編集人の徐静波が、中国に「朝食革命」が起きていて、日本のパンがもてはやされていると書いている。中国の朝食と言えば「粥・ショーロンポー・饅頭」と思っているだろうが、実際には大きな変化が起きていて、特に若い家族は朝に牛乳を飲む。牛乳と油っぽいショーロンポーは合わないのでパンを食べる。

しかし、中国にはパン屋はけっして多くなく、上海そごうの地下の川崎パン店は、価格は高いが、上海で一番おいしいパン屋として大評判で、金持ちはわざわざ車に乗って買いに来る。また上海の古北地区でパン屋を開いた佐藤和夫さんの店は、面積45平米、前は店舗で後ろに作業場がある典型的な日本式ベーカリーで、1日に600個を売り上げる。投資額は日本円でわずか1200万円だった。

今は日本のラーメンが中国市場を賑わしているが、この次は日本のパンだろうと徐編集長は予測する。「13億人の半分が毎日パンを食べるとすると、この市場は天文学的な規模となる」と。なぜパンも日本のパンなのかというと、「木村屋のあんパン」に象徴されるように「日本はアジアで西洋文化の融合に最も成功した国で、欧米の品物を日本人の生活に合った新製品に作り替えた。日本のパンはヨーロッパのパンよりおいしいし、種類も多い。これは奇跡」だからだと言う。

しかし日本が得意なのは、「西洋文化の融合」だけではない。ラーメンはいうまでもなく中華料理を源流とする日本独特の大衆食文化で、それが中国に逆輸入されて、いま日本のラーメン店チェーンがいくつも進出して大展開している。韓国焼き肉もそうで、大阪・西成の在日コリアン街に発して日本中に広まって韓国に逆上陸した。

西洋だろうとアジアだろうと、外から来たものをそのまま有り難がるのでなく、一旦吸収・消化して日本の風土や日本人の好みに合うよう繊細な味や食感に改造して洗練されたものとして出し直すことに長けていて、それを私は「文化的な発酵能力」と呼んでいる。フランス料理の本場パリでさえも、最近はこってりしたソースに頼るのでなく、素材の力を最大限に引き出す繊細な味付けが好まれる傾向があって、そのため一流レストランのどこでも日本人シェフが引っ張りだこになっていると聞いた。日本人の味覚の繊細さは、それを提供する際の気配りや心遣いとパッケージされるとなおさら、これからの立派な「輸出品」となって世界を席巻しうるのではないか。

なお、徐さんは私の友人で、中国の経済事情や日中経済関係を主に扱うこの新聞を2001年から月刊で発行すると共に、近年は日本事情を中国語で紹介するサイト「日本新聞網」を運営して1日20万アクセスを得ている。

《高野孟のTHE JOURNAL》
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