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【NLコラム】アルハラって何だ?(高野孟)

《新聞はベタ記事が面白い》No.004

7日付日本経済新聞34面の下の方に「アルハラ『認識足らず』/フジテレビ社長」という19行のベタ記事がある。「アルハラ」という言葉を知らなかったので、一瞬、スペインのアルハンブラ宮殿のことかと思ったが、「アルコールハラスメント(酒の席での嫌がらせ)」の話。フジテレビが6月9日に放映したバラエティー番組「めちゃ×2イケてるッ!」(何という意味不明のタイトルだ!)で出演者が酒の強さを競った企画について、飲酒運転で子を亡くした親らでつくる団体などが「危険なアルコールの飲み方を助長する」として抗議していたのに対し、フジテレビの豊田皓社長が7月6日の定例会見で「行きすぎた面があった」と謝罪し、アルハラに対する認識が少し足りなかったので勉強会を開いて局内で認識を深めると述べた、とのことである。

こういうテレビのバラエティ番組の愚劣さは指弾されてしかるべきだが、かと言って「アルハラ」がテレビ局が勉強会まで開いて認識を深めるべき社会的規範なのかどうかは、疑問が残る。上位概念に「パワハラ」すなわち職場などでのいじめがあって、そのいじめが酒に絡む場合、例えば上司が部下に無理矢理酒を飲ませて精神的・身体的な苦痛を与えるとか、学生の部活のコンパで先輩が後輩に「一気飲み」を強要するとか、いうのがアルハラなのだろう。世の中には下戸も少なくないし、中には体質的にアルコールを一切受け付けないという人もいて、そういう人に無理強いすれば命にも関わることだからそんなことはあってはならないが、こんな妙なカタカナ語が生まれる遙か以前の大昔から、たのしく酒を飲むためのルールというか常識はあったはずで、その基本は自己責任である。そんなことも身につけないで世の中に出て行くオトナコドモが多いことが、むしろ問題ではないのだろうか。

《高野孟のTHE JOURNAL》
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