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テレビ報道の忖度(2)

「おいおい書いていることと、言っていることが全然違うじゃないか」  やや怒気を含んだ電話の主は、これまでさんざん取材でお世話になった情報 源のひとりだった。全く指摘どおりだった。反論の余地もない。コメントして いる当事者が観ていてもそう思う。事情の知らない他人が見ればなおさらだ。  外相辞任まで私は『週刊文春』や『文藝春秋』などの雑誌を舞台に田中眞紀 子氏の批判を繰り返していた。就任1ヶ月前には、取材の結果として「批判的 だ」という評価を受けることになった『田中眞紀子の恩讐』(小学館)も著し ていた。この日のテレビ出演は、このような活字メディアでの記事を読んだ番 組関係者から声のかかったものだった。当然私のスタンスは知っていると思わ れた。たとえ忙しくて読んでなくても雑誌ならばタイトルで分かるだろうし、 本ならば数ページ読めばたやすく判明することだ。だがこの朝、私はそんな自 分の考えが極めて甘いことを、テレビ画面から教わった。
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