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安保法制(戦争法制)案強行採決は、日本国民の将来をかけた闘いの始まり(大貫康雄)

安倍政権の衆議院での安保法制法案強行採決は、戦後日本の安全保障政策を根本から変えるだけに、海外メディアは、これまでになく分厚く報じている。

 

当然のことながら不信と警戒の念を出す中国・韓国のメディアは別にして、海外メディアの多くは、・依然、国民の圧倒的多数が反対していること、・参議院での審議過程で更に反対が増えること、・終戦の日があること、などを挙げ、「日本国民の(特に若者たちの)将来を方向づける闘いが始まった」、と安保法制案が実際に法律となり施行されるか否かを見極めるまで長期的な論争が続くと見ている。

 

このうち英BBCは、国会は現在衆議院で自民党が圧倒的多数を占めているので「安倍総理は(衆議院内では)現実を見ずに強行採決したが、国会外では現実に晒される」、と続けた後、「(これまで政治的に無関心だった)若者が突然政治に覚醒した」、と言い、「集団的自衛権の行使を前提にした法制案は憲法違反」とか、「国民の声を無視して数の力で一方的に採決する方法への反対」、強行政治をする「安倍総理自身への反対」など、国会前での抗議デモに参加した大学生へのインタビューを紹介。

 

その後、「日本の今後・将来を決める(若者たちの)闘いが始まった」、とこれから若者たちがどんどん声を挙げていくことを予想させている。

 

ドイツの「DW・ドイッチェ・ヴェレ」は、これまでの経緯を辿りながら「衆議院内の審議は感情的な政治論争となり(今後にしこりを残した」、(強行採決しても)「国外で武力行使の可能性を開くのは法律的にも政治的にも疑義があり大論争となるだろう」、と今後も国民が強く反対することを予測する。

 

更に具体的に安倍総理の直面する現実を列挙、「憲法改定には必要な国会での(3分の2以上の)採決と、その後の国民投票が必要だが、(反対世論が強いのをみて)安倍総理はそれを避けた」、

 

また「安倍氏は米議会での演説で安保法制を包括的に改定する、と約束したが(国民の多数が不信感を抱いたため)、強行採決した安保法制は(今の法律に比べ)少し改定されただけで、(国民の強い反対で)自衛隊が米軍の武力紛争に加わることは考えられない」(R・ドゥジャリック・テンプル大学日本校)、と紹介。

 

続いて安倍政権とその言動に国民の目が更に厳しくなったことを列挙。

(安倍氏に近い)「日本テレビの世論調査でも59%が改定反対、賛成は24%だけ」、「国民の理解が得られず安倍内閣支持率は2012年の発足以来最低に」、

安保法制案を“憲法学者の98%が安保法制案は憲法違反と見ている」(長谷部・早稲田大学教授)「”法の支配“の原則を侵害する」、「クーデターだ」(など専門家の見解を紹介)、

 

「安倍総理は自衛隊海外出動の例として1つだけ、ホルムズ海峡封鎖の事態を挙げたが、ペルシャ湾を通過する石油への日本の依存度は大幅に減少している」

などとわざわざ自衛隊が出動する必然性が無いことを述べ、

安倍総理の説明を信じない国民が更に増えることを想起させている。

 

 DWはこれとは別に、海洋進出を拡大する中国に対する安倍氏の恐怖心が日米軍事協力の強化を図る背景にある、と長い記事も載せている。

 

またシュピーゲル(ドイツ語版)、ガーディアン紙、NYタイムズ紙なども、「台風到来で悪天候にも拘わらず15日(水)と16日(木)は国会周辺では安保法制案の強行採決に抗議する人が10万人に上った」、「全国各地でも多くの国民が抗議デモを繰り広げた」、と国民の多くが強く反対していると報じている。

 

この関連でNYタイムズは、「安倍氏が、後藤さん、湯川さんの2人がシリアで過激テロリスト集団ISISに殺害された事件を持ち出し(利用するように)、安保法制が実現すればこうした場合、自衛隊が救出に出動できる、などと安保法制が是非とも必要だ」、と述べたことも記している。

(過激派に拘束された国民を武力で救出出来るなど、先ずあり得ない仮定。アメリカでさえ極めて難しいことなのに)

 

しかし「衆議院での強行採決に中国・韓国は改めて安倍政権に不信と警戒の念を強め、参議院での審議過程で安倍総理の支持率は更に低下して行く」、たとえ「安保法制案が可決されても、数多くの憲法学者が集団訴訟を起こすなど法廷での審理が待っている

 

等々、衆議院での強行採決を契機に多くの日本国民が危機意識を持ち将来をかけた抵抗が始まった、と見ている。

そして安倍氏の思惑通り自衛隊が海外でどの程度まで武力行使出来るようになるか判らず、また可能になるにしても、相当の時間がかかることを想起させている。

 

〈文:大貫康雄、写真:7月16日衆議院本会議より〉