国連人権高等弁務官、“安倍総理は旧慰安婦達と会い、苦しみを直接聞くべき”(大貫康雄)
少し前になるがソウルで6月24日、国連のゼイド・ラド・アル・フセインZeid Ra’ad Al
Hussein国連人権高等弁務官(UN High Commissioner for Human Rights)が初めて元慰安婦の女性達と面会し、“安倍総理に旧慰安婦の女性達と会って、女性達が受けた苦しみを直接聞くよう”、異例の要請をしていた。
旧従軍慰安婦(性の奴隷)問題、国際社会では戦時中の旧日本軍による深刻な人権侵害と見なされるが総理をはじめ安倍政権は、強制性は無かった、慰安婦問題は1965年の日韓国交回復の際に解決済み、と言う、一方韓国パク政権は慰安婦の人たちが納得するような、謝罪と賠償を求めており両者の主張の隔たりは埋まらず、日韓首脳会談の実現に一番の障害となっている。
ゼイド・国連人権高等弁務官が元慰安婦の女性達と会った事実は日本でも報じられたが、ゼイド氏が、(慰安婦問題を根本的に解決するために)安倍氏に元慰安婦の女性達と面会し、これまでの苦悩や差別などを直接聞くべきだと、語った点は何故か報じられていないようなので、改めて発言の重要性を指摘して置く。
ゼイド・高等弁務官のソウル訪問は、北朝鮮の人権侵害問題の調査と解決を進めるため国連人権高等弁務官のソウル事務所開設のためで、ゼイド・高等弁務官は23日ソウル入りすると直ぐに「戦争と女性の人権博物館」を訪れ、3人の被害者と会い、話を聞いた。
この席でゼイド高等弁務官は次のように発言した:
元慰安婦の女性達は戦後、家族にも受け入れられず、自殺した人もいる。また多くが不妊になり結婚も出来ず、子供を持てなかった。(慰安婦とされた)多くの犠牲者は辱めを受け貧窮した人生を送ることになった。
慰安婦問題で日本政府は幾つか改善策を講じたが十分ではない。“安倍総理は元慰安婦の女性達を訪ね、犠牲になった人たちが受けた苦しみなどを直接聞き、この人たちの心情を聞いて対処するべきだ”。
(何故なら)謝罪や賠償が十分になされたか否かは(加害者の政府が判断するのでなく)、
犠牲者・被害者が納得、判断することなのだ。
そしてゼイド国連人権高等弁務官は、慰安婦の女性達とは今後も連絡し、お会いする積りだ、と国連人権高等弁務官として慰安婦問題の解決に尽力することを約した。
戦後70年、慰安婦とされた被害者の女性はいずれも高齢になり、生きている間に日本政府がきちんと謝罪し賠償する時間は限られている。
現状では、安倍政権に解決能力も意志も無く、通り一遍の主張を繰り返して国際社会の軽蔑を招くだけだ。ゼイド高等弁務官の真摯な訴えに耳を貸すことはないだろう。
しかし、被害者が生存している間に日本政府が根本的に解決しない場合、慰安婦問題は将来に亘って消し去ることのできない歴史の汚点となる。それが安倍政権の下で起きることになる。
〈文:大貫康雄、写真:ゼイド長官(By Wl219 at en.wikipedia [Public domain], from Wikimedia Commons)〉