ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(473) パラバドミントンJapan国際で、日本代表がメダル8個獲得!

11月7日から12日にかけて「ヒューリック・ダイハツJapanパラバドミントン国際大会2023」が国立代々木競技場第一体育館(東京渋谷区)で開催されました。パリパラリンピック出場につながるポイントレース大会のひとつで、中国やインドネシアなど世界36の国・地域から197選手が参加。日本からは19選手が出場し、金2個を含む全8個のメダルを獲得し健闘しました。

金メダルを獲得した一人は女子WH1(車いす)の里見紗李奈選手で、シングルス決勝で中国選手に21-11、21-9のストレートで勝利し、頂点に立ちました。東京パラリンピック金メダルの里見選手は緩急をつけたショットで相手を翻弄しながら、終始攻撃的な姿勢を崩さず、東京パラからつづく連勝記録も伸ばしました。

「昨日のダブルスで負けてしまったので、シングルスは絶対に勝ちたいという想いでした。シングルスの連勝記録を伸ばしたい気持ちも強かったので優勝できてほっとしています」と笑顔で語りました。

女子WH1(車いす)シングルスで金メダルを獲得した里見紗李奈選手

前日は山崎悠麻選手(同)と組んだ女子ダブルスWH1/WH2で、中国のペアに21-23、16-21のストレートで敗れ、銅メダルに終わっていた里見選手。東京パラでは同ペアでダブルスでも優勝しており、来年のパリパラでも二冠を狙っています。今回戦った中国の選手たちはその目標に立ちはだかるライバルですが、戦い方をいろいろ試せたようで収穫も大きかったようです。

「次は(相手も)もっともっと対策してくると思うので、それも覚悟したうえで、しっかり頑張りたいです」

里見紗李奈選手(左)は山崎悠麻選手と組んだ女子WH1/WH2ダブルスでは銅メダルを獲得

もう一つの金メダルは男子WH2シングルスで、同じく東京パラ金メダリストの梶原大暉選手(日体大)が香港選手を21-15、21-15で下して獲得しました。「攻め急がない。体力には自信がある」と決め、長いラリーから勝機を探りながら「後ろに張り付かせて、前に落とす」戦法で、69分という長丁場の試合を制し、「こうなることは予想できていたので、そこでストレートで勝ち切れてよかった」と振り返りました。

「練習したことが少しずつ出せてきてはいるので、もっと精度をあげて楽に勝てる試合が多くなるように今後もやっていきたいです」

男子WH2シングルスを初制覇した梶原大暉選手。「強い選手になりたいし、応援してもらえる選手でありたい」

男子WH1-WH2ダブルスの決勝では西村啓汰選手/松本卓巳選手ペアが中国ペアに4-21、15-21で敗れましたが、初の準優勝を果たしました。

松本選手は、「1ゲーム目は身体も硬く、緊張もあってなかなか動かなかったですが、2ゲーム目から二人の息も徐々に合ってきて、西村選手がクロスカットを決めてくれたりして良かったです。日本開催の大会でメダルを獲れたことが嬉しく、感謝したい」と振り返れば、西村選手は、「今大会は少しでも上に行きたいと意気込んできたので決勝まで残れたのは良かったです。ただ、パワーもスピードもまだ足りていなかったので頑張ってやっていきたいです」とさらなる成長を誓っていました。

男子WH1/WH2ダブルスで銀メダルを獲得した松本卓巳選手(左)と西村啓汰選手

立位クラスでは女子SL4の藤野遼選手がただ一人、シングルス決勝に進出。東京パラ5位入賞で、昨年の世界選手権では準優勝し、今大会では初優勝を目指していましたが、中国のチェン・フーファン選手に5-21、12-21で敗れ、銀メダルでした。

「失うものは何もないからと思って打っていきましたが、自分の決め球をことごとく取られました。フーファン選手は配球も精度も高い。次に対戦するときはもう少し点数を取れるように、強い相手と練習を積みたい」と前を向いていました。

女子SL4シングルスで銀メダルを獲得した藤野遼選手

長島理選手は男子WH1シングルスで銅メダルを獲得しました。東京パラは5位、昨年の東京開催での世界選手権でも8位で、44歳のベテランは、「日本での国際大会でのメダル獲得は初めて。鬼門の一つを突破できてよかった」と安堵の表情。準々決勝で西村選手(32歳)をストレートで破ったことについても、「若い選手に負けたくないという反骨心もありますが、正々堂々と戦いながら、『長島さんには勝てないな』と思わせる存在でい続けたい」と手応えを語りました。

男子SL3(立位・下肢障害)シングルスで銅メダル獲得の藤原大輔選手。1時間35分の大熱戦となり、最後は手足が攣ってしまい、フルセットの末に敗れ、「残念」

なお、パラバドミントンのパリパラ出場権争いのレースは来年3月までつづき、最低3試合、最大6試合で獲得したポイント合計によって出場権が与えられます。来年2月には獲得できるポイントが高い世界選手権(タイ)が控えます。今大会でつかんだ自信や課題を糧に、日本代表のさらなる躍進を期待したいと思います。

「ヒューリック・ダイハツJapanパラバドミントン国際大会2023」に出場した日本代表チーム

<日本代表の主な結果>
金メダル:女子シングルス WH1 里見紗李奈/男子シングルス WH2 梶原大暉
銀メダル:女子シングルス SL4 藤野遼/男子ダブルス WH1-WH2 西村啓汰・松本卓巳
銅メダル:男子シングルス WH1 長島理/男子シングルス WH2 松本卓巳/男子シングルス SL3 藤原大輔/女子ダブルス WH1-WH2 里見紗李奈・山崎悠麻
ベスト8:男子シングルス WH1 西村啓汰/女子シングルス WH2 山崎悠麻/女子シングルス SL4 澤田詩歩(次世代アスリート)/男子シングルス SU5 今井大湧

(文・写真: 星野恭子)