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"IoT"時代、しかしそれはセキュリティ問題が付いて回る時代でもある

 今や時代は“IoT”だとマスコミは盛んに報道している。

 絵文字ではない。“Internet of Things”の略で、私たちの社会がすべてがインターネットで繋がっているという意味だ。確かにパソコン、スマホだけでなくテレビ、冷蔵庫、電車、自動車、お風呂までネットに繋がっている。

 

 しかし、そんなことで驚いていてはいけない。

 先日、経営学者でマーケティングの神様として知られているフィリップ・コトラー博士に会ったら、「これからは“Everything Smart”の時代だ」と言われた。

 つまり、すべてがネットで繋がっているだけでなく、それを全知全能のコンピュータが愚かな人間に代わって管理してくれる人工知能社会が到来するというのだ。

 

 なんとも背筋が寒くなるお話だが、最近そんな時代の到来を感じさせるニュースに出くわした。

 バービー騒動だ。バービーといえば米国の女の子のあいだで一番の人気を誇る着せ替え人形。我が家にも娘が幼かった頃に買いもとめたものが何体もあり、その内のいくつかはマニアにとっては”ビンテージ“ものとなっているらしい。

 

 騒ぎのきっかけは、2月にニューヨークで開催された「トイフェア2015」だった。

 上半期最大の玩具見本市だけあって世界の玩具メーカーが新製品を多数発表した。そんな中、バービー人形を販売するマテル社が展示したのは、子どもと会話できる「ハロー・バービー」。音声認識ソフトを搭載していてWi-Fiでネットと繋がる。

 

 バービーのベルトにあるボタンを押すとバービーから質問され、それに子どもが答えながら会話が進んでいくという。学習機能もついているので話しかけているうちに子どもの趣味嗜好まで覚えてしまう優れモノだ。

 

 しかし、これに待ったをかけたのがプライバシー擁護団体。

 バービーと子どもの会話が外部の第三者に漏れる危険性を指摘し、「盗聴の道具にもなりかねない」と反対運動を起こしているのだ。家族のプライベートな会話まで送信されてしまう可能性がある、と心理学者で反対運動を陣頭指揮しているスーザン・リン氏はニューズウィークの取材で語っている。

 

 たかがお人形と考えてはいけない。

 1949年に英小説家ジョージ・オーウェルが描いた未来の監視社会がいまや現実のものとなりつつあるのだ。

 

 以前にもこのコラムで、米国政府が最新技術を駆使して密かに自国民のプライベートな空間にまで監視の目を光らせていることを中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン氏が暴露したことを書いた。

 あなたが持っているスマホが知らないうちに盗聴装置に使われている可能性があるのだ。

 

 マテル社によれば、「ハロー・バービー」は11月に74.99ドル(約9000円)で売り出される予定だとのこと。なんだか売れそうで怖い。

 

(蟹瀬誠一)<t>

画像:蟹瀬誠一コラム「世界の風を感じて」より