予算案の採決を政争の具にする参院のドンの勘違い(藤本 順一)
12年度補正予算案が18日、参院予算員会で審議入りした。前日のテレビ番組で自民党の中曽根弘文参院議員会長は野党に対し、安倍晋三首相が訪米する21日に採決できるよう協力を求めた。
もとより企業業績が回復基調にある中、早期の成立が求められるところだ。国会日程上も「参院では5日間で29時間半の総質疑時間があったが、やりくりすれば(21日までの4日間で)十分な質疑ができる」(中曽根氏)という。
自民党は今後の国会運営について石破茂幹事長が同日、「衆院では与党が3分の2あるので(衆院で再可決)できなくはないが、あまりにも多用すると、国民の反発を受けることは身に染みて知っている」と述べている。
与党として丁寧な国会運営を心掛けるのは当然だとしても、一方で最大野党の民主党は輿石東民主党参院議員会長が「審議に入る前に21日に成立させてくれというのは、参院の存在を無視している。十分な審議をお願いしたい」と審議引き延ばしの姿勢を見せている。困ったものだ。
民主党にはよくよく考えていただきたい。今回の大型補正予算案の編成は元はと言えば、民主党政権3年間の経済失政のツケを安倍政権に尻ぬぐいさせるものではないのか。同様に安倍首相の訪米も前政権でギクシャクした日米関係の再構築が目的である。そうであれば、後顧に憂いなきよう安倍首相の訪米前、早期成立に進んで協力するのが民主党の務めだ。それを「参院の存在を無視している」とは勘違いも甚だしい。こんなことでは民主党は夏の参院選でも惨敗するに違いない。
さらに言えば、福田政権以来のねじれ国会、参院は良識の府であることを忘れて党利党略に走り、自ら政争の具と化して政治力を誇示してきた。その結果、決められない政治に国民の不信は募りに募った。参院のドンと呼ばれる輿石氏は、その元凶の一人だ。こんな政治家に牛耳られ、振り回される参院なら無視されても仕方がない。不要論が燻るのも肯けよう。
【ブログ「藤本順一が『政治を読み解く』」より】