【米NY通信】総選挙、海外在住者はネット討論で判断する(前田 真里)
海外から見た総選挙2012(1) ~在外選挙とネット利用~
参議院選挙以来、2年ぶりの国政選挙。海外では、公示日翌日から在外公館で投票が行われた。外務省によると、海外に住む日本人は、過去最高を更新し118万2557人。そのうち推定有権者数は、約88万7000人と総務省が報告している。
ニューヨークで投票した人に話を聞くと、これまでより情報収集を積極的に行ったという声が多く聞かれた。
選挙人登録の促進や制度の改善を訴える海外有権者ネットワーク・NY代表の竹田勝男さんは、「海外に住むからこそ、国内の政治混迷を受けて危機感を持っている人が多い。前回より一層関心が高くなっている」と話す。
約20年間、国内外で市民活動を続けている海外有権者ネットワーク・日本代表の若尾龍彦さんは、「今回の選挙では各選挙管理委員会において選挙公報や候補者の情報などがネット記載され、その面では我々の要望の一端が認められ一歩前進です」と選挙公報のホームページ解禁を歓迎した。
前回、選挙が行われたのは、2010年。以降、インターネットを取り巻く環境は、大きく変化している。
今回の総選挙の新たな動きの一つとして“ネット党首討論”もあげられる。11月末、東京都内に主な政党の党首が集まり、党首討論会がネットメディアを通して初めて開かれた。
インターネット番組「ニコニコ動画」では、約140万人が視聴。10人の主な政党の党首が登壇し、TPP、消費増税、原発などをテーマに議論を繰り広げた。中継の映像は、編集される事なくノーカットで約1時間半、生中継された。
IT業界を中心に取材する・ジャーナリスト津山恵子さん(ニューヨーク在住)は、「アメリカでは、テレビやネットで情報が広く解放(開放)されている。日本では、公職選挙法などの規制もあるが“ニコ動”というブレイクスルーがあったのは良かった。有権者がネット党首討論の視聴をSNSで呼びかけるのも歴史的に初めて。今後、ネットメディアの力を借りて有権者がリアルタイムで政治家に問題提起できるチャンスになるのでは」と話す。
ネット動画のヘビーユーザー金田浩樹さん(東京都在住)は、「切り取られない情報では、政治家個人の人間性が露呈される。報道の中では、エポックメイキングな出来事」と話した。
東日本大震災後、twitterなどSNS利用者が増加し、情報を知りたい時に手軽に受け取れるようになった。海外においてもライフスタイルにあわせて多様な情報を享受できるようになったのである。大統領選でオバマ氏とロムニー氏の公開討論会が注目されたように、選挙の判断材料としての“情報”がネットで開かれ、国内外の日本人が関心を示しているのは、大いなる事だといえるだろう。
次回は、在外選挙の現状と課題についてお伝えしたい。
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