安倍首相が自慢する大幅ベースアップは雇用改悪の見せガネ
春闘の最中、輸出産業を中心に大手企業の大幅なベースアップが報じられている。
「賃金上昇は過去15年間で最高となった昨年の水準をさらに上回る勢いだ。今後とも労使がしっかり真摯な議論を行っていくことが求められる」
安倍晋三首相は18日の参院予算員会でこう述べ、春闘相場の先行きに期待感をにじませた。また、「普通の労使交渉だけではなかなか(難しい)。デフレマインドが経営者の中にこびりついている。好循環に向け賃上げの必要性を経営者にもご理解いただきたい」とも述べ、自らが主導した政労使会議の成果であることを強調。さらには企業業績の改善が円安頼みとの批判について、12年連続でベアを実施した大手家具犯罪のニトリホールディングスを引合いに出し「(製品を)外で作って輸入しており為替動向は必ずしもプラスになっていないにもかかわらず、5000円以上の思い切ったベースアップを決定した」と反論した。
いいとこ取りの自画自賛のような気がしないでもないが、内閣支持率が急落する安倍首相にとって、春闘相場の出来不出来は政権の命運を左右する一大事だ。何より春の統一地方選を間近に控えてアベノミクスの成果を国民有権者にアピールしたいところだ。
しかしながら安倍政権は今国会、評判のよろしくない労働制度改革を最優先課題に掲げての統一地方選である。
成立を目指す労働者派遣法改正案は、これまで最長3年としていた企業による派遣労働者の受け入れ期間の上限を撤廃する正社員の派遣社員化を促すものだ。
さらに安倍政権が導入を目指す「残業代ゼロ」制度は、「ホワイトカラーエグゼンプション」とも呼ばれ、サラリーマンの給料を労働時間ではなく成果に応じて支払うことで企業の人件費負担を軽減するのが狙いだ。
都市部の勤労者にとっては死活問題とも言える労働制度の改悪となる。
それからすれば、大企業のベースアップはいわば見せガネも同然。気が付けば身ぐるみ剥がされているかもしれない今春闘である。
(藤本順一)<t>
写真:首相官邸HPより