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原発推進IAEAが健康評価で主導権~住民の批判無視して福島で国際会議(おしどりマコ)

昨年12月に福島県で行われたIAEAの国際会議に関する記事(週刊金曜日12月21日号)に加筆して投稿する。

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2012年12月15~17日に福島県郡山市にて
IAEA(国際原子力機関)の「原子力安全に関する福島閣僚会議」が開催され、
IAEAが除染や健康評価などについて福島県に協力していく、という覚書に署名がかわされた。

※関連記事
【速報】IAEA天野事務局長と福島県佐藤雄平知事との覚書
http://op-ed.jp/archives/5749

【速報IAEAと福島県立医科大との実施取決め
http://op-ed.jp/archives/5779

【速報】IAEAと福島県立医科大との実施取決め全文
http://op-ed.jp/archives/5784

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この会議に先駆けて、12月9日に地元説明会が行われた。
直前の告知だったので参加した住民はわずか25名。
そのほとんどが会議に際して批判的であった。

「事故があった福島で原子力『安全』に関する会議とは何だ。『危険』に関する会議ではないのか」(30代女性)
「福島県は脱原発を明言したが、そこでなぜ原子力推進のIAEAが会議をするのか」(40代女性)

地元説明会を主催した外務省は
「IAEAの目的は原子力の平和的利用の促進と、核兵器転用の防護。会議名は今さら変更できない」

この閣僚会議の目的の1つが、IAEA天野事務局長と佐藤雄平福島県知事の署名式だと聞かされると、説明会はさらに紛糾した。

「我々県民の健康を原子力推進のIAEAに委ねたつもりはない」(30代女性)
「私たちはIAEAが福島に来ると知って、IAEAについて勉強した。
1959年にWHO(世界保健機構)とIAEAが結んだ協定を知っているのか。」(50代女性)

この協定はWHOとIAEAが協力していくことをうたっており、
これ以降、被曝による健康被害の調査はの主導権はIAEAに移る。
2009年にはWHOの被曝の専門部局は廃止された。
これにより、WHOは被曝問題に関して、公平な評価をしていないと、批判する団体、医師も世界に多い。

この質問に外務省は
「1959年の協定については知りません。不勉強ですみません。」と回答。

「福島県とIAEAの覚書の詳細は何だ。健康に関してどのようなことを始めるのだ」(50代男性)
という問いには「詳細は知らない。」と明らかにされなかった。


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12月15日の本会合の署名式で明らかにされた内容に筆者は驚いた。
覚書の「人の健康の分野における協力に関する福島県立医科大学とIAEAとの間の実施取り決め」の部分である。

「IAEA憲章上の任務を尊重しつつ知的財産は相互に協議」
「他方によって、秘密として指定された情報の秘密性を確保」
「両当事者は、日本国政府が1963年4月18日にIAEAの特権及び免除に関する協定を受諾したことに留意」

63年協定は、IAEAの財産等に関する訴訟・捜索・税等の免除や、
IAEA職員及び専門家に対する外交特権付与が主な内容である。
協力関係といいながらIAEAにかなり主導権、特権がある取決めではなかろうか。
しかし資金の項目は「日本国政府からの資金の利用可能性に従う」とある。

福島閣僚会議には約120ヶ国が参加し、代表演説を46ヶ国が行った。その内容は
「アジアにはこれから原発がもっと作られる(ロシア)」
「新規に原発を作る国を支援する(USA)」
「この会議はアフリカにとって重要。我が国も原発はないがこれから作りたい。そういう国々にとって重要。(ザンビア)」
「国際的に信頼できる原子力のパートナーに我が国はなる(韓国)」
「福島原発にもウランをたくさん輸出した。これからももっと輸出していく(ナイジェリア)」
「津波と地震でたくさんの方が亡くなったが原発事故では1人も亡くなっていない(エジプト)」
など、原子力推進の演説が続いた。

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筆者は11月6~8日に行われたOECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)会議も取材した。
そこで国立研究機関の研究者にこんなことを囁かれた。

「福島で原発事故があったが、世界ではこれからも原発がどんどん作られる。
50機はもう予定に入っている。
これからアフリカに原発を作るため、住民にどうやってリスクの説明をし、
受け入れされるかを考える。そのことを踏まえて記事に書いてほしい」
マガジン9、第54回「脱ってみる?」OECD/NEA会議の件。
http://www.magazine9.jp/oshidori/121206/index.php
OECD会議では福島県住民にヒアリングして
「住民は原発事故にあったが素晴らしい価値観と巡りあえたという。
それは故郷を大切にしたいという気持ち。自分の手で除染をして住み続けたいという気持ち」
とまとめられていた。

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IAEAが福島に入るという真の意味は何か。覚書に署名をした佐藤雄平知事に筆者は質問した。

「地元説明会で県民は原子力推進のIAEAに自分らの健康を評価されたくないと過半数が言っていたが。」

佐藤雄平県知事の回答は「…ご理解して頂くしかありません」だった。

【週刊金曜日、12月21日号に加筆】