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2017年10月30日
佐野稔の4回転トーク 17~18シーズン Vol.③ すべてにおいてレベルアップを感じさせた宇野昌磨~ グランプリ・シリーズ第2戦「スケート・カナダ」を振り返って
●ミスにも関わらず、300点越えする安定感 
 SP(ショート・プログラム)では4回転-3回転を予定していた連続ジャンプが4回転-2回転になりながら、ひとりだけ100点台をマーク。FS(フリー・スケーティング)序盤の3回転ループは体勢を崩して氷に手をつき、中盤の4回転フリップは軸が傾きGOE(出来栄え点)はマイナス評価、4回転トゥ・ループも回転不足と、言わば3つの大きなミスを犯してしまったにも関わらず、宇野昌磨は総合で300点越え。2位のジェーソン・ブラウン(アメリカ)とは、40点近い大差がつきました。

 宇野はこれで5大会連続の300点越えとなったそうです。たしかソチ五輪の頃は‘夢の300点’と言われていたはずなのですが…。まるで遠い昔のことのようです。コンスタントに高得点を続けることのできる安定感は、羽生結弦以上と言えるでしょう。もしSP、FSともノーミスで滑ったなら、羽生の持つ世界最高点の330.43を更新できるのではないか。そんな予感を抱かせるくらいの圧勝でした。


●まだまだ成長を続けている宇野の凄さ
 「スケート・カナダ」の宇野からは、スケーティング・スキル全体がさらにレベルアップした印象を受けました。スピンの回転速度は速くなり、ジャンプの質が上がっています。高さも幅もあって、空中姿勢は美しく、跳んだあとの流れも良くなっている。これまでは「はい、ジャンプを跳びました」と、着氷のときに一瞬の間ができる感じがあったのですが、今回はまったく淀みなく、着氷から滑らかに次の動きに移行していました。

 SPのあとに行われた記者会見では「ジャンプより表現がうまくなりたい。いつかパトリック・チャン(カナダ)やジェーソン・ブラウンと同じくらい、表現ができていると言われるようになりたい」と話していましたが、今大会の採点表から、表現力を評価する演技構成点だけを抜き取ってみると、SP、FSのいずれも、最高点は宇野でした。技と技とのつなぎ、動作の連続性と、練習でさまざまに取り組んできたことが形になって、演技の随所に表れています。

同じくSPの終了後に「自分でも理由は分からないけど、身体が動き過ぎた」と振り返っていましたが、私の経験上、こういうときの結果は得てして良くないものです。ですが今回の宇野は、そうした自分の状態を冷静に把握して、その上で勢いに任せるのではなく、それなりにコントロールしてみせたのですから、たいしたものです。

 本人は体力不足を痛感したようですが、これはシーズンが進んで実戦を重ねていくことで、ある程度は解消できるはず。今回は習得したばかりの4回転サルコゥをあえて回避した代わりに、FSの終盤に3度の連続ジャンプを組み込むことにこだわり、その自分に課したテーマをしっかりと乗り越えてみせました。こうした飽くなき向上心が、いまだ止まらぬ宇野の成長を支えているのでしょう。


●「第3の男」は、本命なき大混戦
 過去に「スケート・カナダ」で優勝経験のある無良崇人でしたが、SPは8位に終わり、FSにいたっては最初のトリプル・アクセル以外、すべてのジャンプで失敗。残念ながら、最下位12位に沈んでしまいました。幸い次の無良のGPシリーズ出場は、最終第6戦の「スケート・アメリカ」の予定ですので、少し時間が空きます。今回の失敗ときちんと向き合って、うまく立て直して欲しいと思います。

 この「スケート・カナダ」の期間中、日本では甲府市で「東日本選手権」が行われ、15年GPファイナル出場の実績を持つ村上大介が優勝。2位には、11月のNHK杯に初出場することが決まっている佐藤洸彬が入りました。今週末には福岡市で「西日本選手権」が開催されます。またケガのためGPシリーズ第1戦の「ロシア杯」を欠場していた田中刑事が、今度の「中国杯」に戻ってきます。

平昌(ピョンチャン)五輪の日本男子の出場枠は「3」ですが、そのうち「2」枠は、羽生結弦と宇野昌磨で埋まってしまうと考えて、まず間違いないでしょう。ふたりに続く「第3の男」は混戦模様。正直いまの段階では、まるで予想がつきません。