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2018年07月23日
「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(231) 世界各地の“力自慢”が、北九州に集結! 日本初のパラ・パワーリフティング国際大会開催へ
またまた、興味深い国際大会の日本初開催が決まりました。日本パラ・パワーリフティング連盟(JPPF)が20日、東京都内で会見を開いて発表した、「北九州ワールドパラ・パワーリフティング アジア&オセアニアオープン選手権大会」です。大会期間は9月 8日(土)~12 日(水)まで、福岡県の北九州芸術劇場で行われます。


「北九州ワールドパラ・パワーリフティング アジア&オセアニアオープン選手権大会」のポスター。入場無料 (提供:日本パラ・パワーリフティング連盟)

 

パラ・パワーリフティングは、脊髄損傷、切断、脳性まひ、機能障害などによる下肢障害のある選手を対象にしたベンチプレス競技で、台にあお向けに横たわった状態で、バーベルを胸まで下してから一気に挙上します。上半身の力だけが頼りです。

障害別のクラス分けはなく、体重区分別に競います。切断の場合は切断範囲に応じて一定の重量を加算した体重で区分されます。男子は49kg級から107kg超級までの10 階級、女子は41kg級から86kg超級まで10 階級あります。

選手は3っ回の試技を行い、成功したなかで一番重い記録が採用され、順位を競います。日本での認知ではまだ低いものの、パラリンピックでは人気競技の一つで、観客も多く大声援が響き渡る競技です。


専用台に横たわり、ベンチプレスの練習に励む選手 (撮影:星野恭子)

 

開催が発表された、「アジア&オセアニアオープン選手権大会」は国際パラリンピック委員会(IPC)の主催大会で、2020年東京パラリンピック出場権に関わるランキング対象大会になります。男女10階級に31カ国から234選手が参加予定で、これは世界選手権に次ぐ大きな規模となるそうです。

リオパラリンピックメダリストの約半数にあたる27人もエントリーしています。注目選手の筆頭は、なんといっても、男子107kg超級のリオ金メダリストで、シアマンド・ラーマン(イラン)選手です。世界記録保持者でもあり、その記録はなんと310kg! 昨年夏に初来日した際には都内で開かれたエキシビション大会で軽々と290kgを挙上しており、今大会での世界記録更新も大いに期待されます。

また、女子41kg級のリオ銀メダリスト、チュイ・ツェー(中国)選手にも注目。最軽量級ながら、自己記録は自身の体重の2.5倍にあたる102kgという力強さです。さらに、ジュニア部門や国別団体戦も行われる今大会は世界トップクラスのパフォーマンスなど、パラ・パワーリフティングの迫力や魅力を目の当たりにできるチャンスです。

日本からはパラリンピック経験者4名を含む、29選手が参加予定です。開催国として迎える2020年大会に向けた日本チームの強化大会として重要な大会となります。日本チームはリオ大会以降、イギリス人のジョイ・エイモスコーチをたびたび招聘して指導を受けるなど強化中です。イギリスコーチとして金メダリスト2名を育てるなど著名なエイモス氏の手腕で、日本チームも徐々に力をつけています。


パラ・パワーリフティングの「アジア&オセアニア オープン選手権大会」開催発表記者会見で意気込みを語った、左から西崎哲男選手、大堂秀樹選手、森崎可林選手、台湾代表のリン・ツーフイ選手 (撮影:星野恭子)

 

この日の会見には日本代表から3選手が登壇。ロンドンから2大会連続パラリンピアンで、リオでは8位入賞の大堂秀樹選手(88kg級)は、リオ後に左肩を手術して以来の本格復帰戦となります。「手術をしてから驚くほど、調子がいい。2013年以来の200kg越えで、自己ベスト更新を狙います。皆さんに恩返しできる試合をしたい。日本での認知度を高めるために、もっと強くなります」と意気込みます。

また、競技をはじめてわずか3年余りでリオ代表となり、さらなる活躍が期待される西崎哲男選手(54kg級)はパワーリフティングの魅力について、「バリアフリーと一体感」とPRします。

競技者が台上に横たわり上半身の力だけで競技するため、健常者と下肢障がい者が同じルールで戦うことができるという意味での、「バリアフリー」です。実際、世界記録を比較すると、障がい者のほうが上回る体重階級もあり、「世界の(パラ選手の)パワーや迫力をみてほしい」と西崎選手。また、選手が一人ずつ競技を行うパラ・パワーリフティングでは観客の注目はその選手一人に集中します。他の選手が声援を送ることも多く、「会場全体が一体感」に包まれる」のだそうです。

実は、今大会が体育館でなく、スポーツイベントとしては珍しい「劇場」で行われるのもそんなところに理由があるようです。パラ・パワーリフティングは1回の試技がわずか3秒と短いですが、選手一人ひとりにとっての「オンステージ」。JPPFの吉田進理事長は、「選手それぞれ、(競技にかける)思いがある。伝えるための演出や工夫をして、『観せる大会』にしたい」と話します。いったいどんな演出となるのか、楽しみです。

また、ジュニア部門に参加予定の森崎可林選手(女子67kg級)は日本チーム最年少の15歳、高校1年生。2017年度の選手発掘事業で見いだされた逸材で、2020年大会に向けたホープの一人。水泳から転向しました。

「競技を始めてまだ1年未満ですが、(パワーリフティングが)大好きなので、長く活躍できるよう頑張りたいです。試合は3回目で、国際大会は今回が初めて。海外の有力選手の試技をみて、多くの糧を得たいです」

もう一人、会見に特別参加したのが、現在、台湾から来日して合同合宿中という、リン・ツーフイ選手(女子79kg級)です。アテネと北京の金メダリストで、リオでは銅メダルを獲得している台湾のエースです。

「アジア大会、そして2020年東京大会で、金メダル奪還をめざしてがんばります。パワーリフティングは(下肢)障がい者にとってとても有効な競技なので、もっと広がってほしい」とツーフイ選手。

上半身を鍛えることで、(移動など)自分でできることが増え、他者のサポートを受ける必要が少なくなり、自立につながるからだと言います。たしかに、腕力がつくことで車いすへの乗り移りなども楽になるなど、日常生活にも大いに役立ちそうです。


パラ・パワーリフティングのトレーニングで、車いすのまま鉄棒で懸垂を行う選手 (撮影:星野恭子)

 

さて、吉田理事長によれば、アジア地域は元々、世界的にレベルが高い地域で、今大会はさらにIPCの意向もあり、初めてオセアニア地区と合体され、加えて、「オープン」大会として他地域からの選手も参加できるようにもなりました。そのため、競技レベルも選手数も、「世界選手権につぐ大きな大会になった。連盟としても、しっかり盛り上げていきたい」と吉田理事長は力を込めます。

世界トップクラスが顔をそろえる大会として、2020年東京パラリンピックの予習にもうってつけ。この機会に、世界の力自慢の競演、パラ・パワーリフティングをぜひ、応援してください!

<北九州ワールドパラ・パワーリフティング アジア&オセアニアオープン選手権大会>
日程: 2018年9月8日(土)~12日(水)11時~競技スタート
会場: 北九州芸術劇場
参考: http://jppf.jp/index
日本代表選手:
【男子】
49kg級: 奥山一輝(21/順天堂大)、加藤尊士(30)、三浦浩(53歳/東京ビッグサイト)
54kg級: 市川満典(44/パワーハウスつくば)、光浦智洋(25/バーベル友の会)、西崎哲男(41/乃村工藝社)、
59kg級: 岡田有史(42/電通国際情報サービズ)、戸田雄也(36)、村井都稚(57)
65kg級: 佐野義貴(50/アクテリオンファーマシューティカルズジャパン)、篠田雅士(30/パワーハウス)、城隆志(58/オムロン太陽)
72kg級: 斉藤伸弘(51)、田中翔悟(33/三菱重工高砂製作所)、樋口健太郎(45)
80kg級: 宇城元(45/順天堂大)、金谷晃央(28/パワーハウス)、佐藤芳隆(43/パワーハウスつくば)
88kg級: 大堂秀樹(43)
97kg級: 石原正治(46/オリンパス・テルモ・バイオマテリアル)、馬島誠(47)
107kg級 中辻克仁(48)

【女子】
41kg級: 成毛美和(49/パワーハウスつくば)
45kg級: 小林浩美(49)
50kg級: 中嶋明子(42)
55kg級: マクドナルド山本恵理(35/日本財団パラリンピックサポートセンター)
73kg級: 坂元智香(36/大分銀行)

【ジュニア男子】
107kg超級: 松崎泰治(19/順天堂大)

【ジュニア女子】
67kg級: 森崎可林(15)

(文・取材:星野恭子)