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2018年03月19日
「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(216) パラアスリートが躍動した10日間。平昌冬季パラが閉幕!
3月9日から10日間の日程で行われた平昌冬季パラリンピック大会が18日、閉幕しました。史上最多となる49の国や地域などから約570選手の選手が参加し、6競技80種目で金メダルをめぐって繰り広げられた熱戦もゲームオーバーです。

18日夜8時から平昌オリンピックスタジムで行われた閉会式は、「We Move the World(私たちが世界を動かす)」というテーマのもと、さまざまな演出が行われました。例えば、聴覚障がいのあるダンサーと、視覚障がいのピアニストや歌手が共演し、調和する社会やパラリンピアンの情熱が世界に広がる様子などを表現。終盤には次回2022年冬季大会を開く北京市長にパラリンピック旗が引き継がれ、10日間灯りつづけた聖火も静かに消されました。


平昌2018冬季パラリンピック大会の閉会式の1シーン。「We Move the World(私たちが世界を動かす)」をテーマに、さまざまな障がいのあるパフォーマーたちが、パラリンピアンの強さなどを表現し、発信した。(撮影:吉村もと)

■存在感示した、日本選手たち

38選手からなる日本選手団は金3、銀4、銅3の計10個のメダルを獲得。前回ソチ大会の6個を上回るという大会目標も達成。長野大会(41個)、バンクーバー大会(11個)につぐ好結果。メダルランキングでも9位と、一けたに食い込む健闘を見せました。

なかでも、アルペンスキーの村岡桃佳選手(早稲田大学)は大回転での金を含み、出場した5種目すべてでメダルを手にする大活躍! 前回高校生で初出場したソチ大会では3種目で5位が最高。また、途中棄権で味わった悔しさなどを糧に、取り組んできた強化が実ったかっこうです。「練習の成果がなかなか試合で発揮できない」という課題があった村岡選手ですが、「殻を破れた!」と、まさに“大ブレイク”を果たしました。まだ21歳。ますますの活躍が期待されます。

クロスカントリースキーで金、銀2個のメダリストとなった新田佳浩選手(日立ソリューションズ)は6大会連続出場の“レジェンド”。2010年バンクーバー大会での2冠以来、8年ぶりに世界の頂点に返り咲き、“見事なカムバック”を果たしました。「37歳にして、まだまだ成長している」とは本人の弁。今後の進退については明言を避けましたが、後輩たちの指導も含め、まだまだ活躍してほしい大ベテランです。

クロスカントリースキー10kmクラシカルで、2大会8年ぶりに表彰台の頂点に返り咲いた新田佳浩選手。写真は銀メダルを獲得した、1.5kmスプリントでの力走 (撮影:吉村もと)

また、新競技のスノーボードで、金、銅2個のメダルを手にした成田緑夢選手(ぐりむ/近畿医療専門学校)。「完璧な銅メダル」「シンプルに嬉しい」「自分の引き出しを増やしたい」など、力あるコメントも含め、“鮮烈なパラリンピックデビュー”を果たしました。「オリンピック出場」も夢に掲げる成田選手は24歳。まだまだ可能性たっぷりの選手です。

さらに、アルペンスキーの森井大輝選手(トヨタ自動車)は自身通算4個目のパラリンピック銀メダルを手にし、苦戦した男子チェアスキー陣のなかで“唯一のメダル獲得”を果たしました。「シルバーコレクター返上」を目指し、様々な努力や準備をしてきた大ベテランでも、パラリンピックの金メダルは簡単ではないことを教えてくれました。「次の北京大会で悔しさを晴らしたい」と語る37歳。まだまだ、これからです!

ということで、10個のメダルは4選手での獲得。特に5個獲得の村岡選手をはじめ、1選手の複数メダルでの積み上げによって達成された数字でした。ただ、新田選手、森井選手のベテラン勢と、村岡選手、成田選手の20代選手ということで幅の広さは見えたかなと思います。

課題の見えた競技もありました。バイアスロンは佐藤圭一選手の8位入賞が最高と苦戦しました。特に強風の中、射撃の命中率が低くかったのが大きな要因でしたが、しっかり当ててきていた海外強豪勢とは「実戦の中でも練習量の差」という課題が浮き彫りに。若い選手も増えてきているので、練習環境の見直しをはかり、海外との差を埋めてほしいです。

バイアスロンで射撃に挑む阿部友里香選手(日立ソリューションズ)。6kmスプリントでは10発満射も果たすなど可能性は示した (撮影:吉村もと)

また、8年ぶりに出場を果たしたアイスホッケー(旧アイススレッジホッケー)も、5試合で5敗と8チーム中8位に終わりました。得点はわずか3得点と振るわず、また大量失点などさまざまな課題を残しました。そんななか、「平均年齢42歳も話題となりました、最年長61歳の守護神、福島忍選手(ニック)は、まさに神がかり的な好セーブも見せてくれました。選手層や気軽に使えるホッケー場の開拓など壁は少なくありませんが、なんとか復活を期待したいです。

アイスホッケーのスウェーデン戦で奮闘する、フォワード熊谷昌治選手(アディダスジャパン/左)。無得点に終わったが、43歳にしての初出場で、貴重な経験を積んだ (撮影:吉村もと)

■広がるパラリンピック・ムーブメント

世界に目を向けると、いろいろな競技、種目で、トップの交代や10代の台頭などがあり、競技レベルの高まりと若返りが見られました。また、金メダル獲得国も過去最多の21カ国に達し、中でも韓国とカザフスタン(以上、クロスカントリー)、クロアチア(アルペンスキー)、中国(カーリング)の4カ国は冬季大会で初めて金メダルを獲得。パラリンピックのすそ野の広がりも感じました。

印象的だったのはカナダです。元々強豪の車いすカーリングやアイスホッケーはもちろん、スキーでもメダリストや入賞者が多かったのです。その要因までちゃんと取材しきれなかったのですが、もしかしたら、2010年バンクーバー大会のレガシーなのでは?と感じました。

日本は今、2020年東京大会に向けて強化中ですが、結果が出るのはもしかしたら、それ以降かもしれません。2020年での結果で一喜一憂するのではなく、「強化には時間がかかる」という目線で選手たちを応援したいなと、改めて思いました。

■2020年東京大会へのヒントに!

大会運営については、また別の機会にじっくり振り返りたいと思いますが、今回は簡単に。施設面ではバリアフリーを意識した工夫はしっかり見られましたが、「慌ててやりました」感が多かったのも事実。点字ブロックも中途半端だったり、車いすでのアクセスが不便だったりと、「残念感」がありました。

また、32万枚以上と冬季史上最多チケット販売数が話題になりました。が、競技によっては空席も目立ち、また、韓国選手の出場種目が終わると、潮が引いたように観客が帰ってしまう光景も多々ありました。

大会ボランティアの中には過去の大会を経験したベテランもいましたが、情報伝達や仕事配分など運営についての不満の声なども聴かれました。

今大会には2020東京大会組織委員会や小池百合子東京都知事など日本からの視察団が大挙して訪れていました。平昌大会は、よい「半面教師」になりそうです。そうして2020大会が充実できれば、「よいヒントを与えてくれた大会」として、平昌大会も“レガシー”を残せたことになるのでは?そんなことも思いました。

こんな風にあれこれ感じ、考えた平昌大会。日本の皆さんにもパラリンピックの、パラアスリートの魅力や迫力を少しでも楽しんでいただける10日間だったらいいなと思います。

(文・取材:星野恭子)