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2017年11月13日
「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(202) 強烈な個性の競演!パラアスリートの魅力に迫る、ドキュメンタリー番組、WOWOWの「WHO I AM」シリーズをぜひ!
当コラムではことあるごとに、「パラスポーツ観戦」を呼びかけていますが、その後押しとなる要因の一つは選手の人となりに触れることではないでしょうか。それぞれにストーリーがあり、魅力もたっぷりな選手を知れば興味も湧き、ファンとなって会場で応援したくなるはず……。というわけで、今回はパラアスリートの素顔に触れ、お気に入り選手を見つけられそうなテレビ番組をご紹介します。WOWOWと国際パラリンピック委員会(IPC)が共同でスタートさせた、「WHO I AM-これが自分だ!という輝き-」というタイトルのスポーツドキュメンタリーシリーズです。WOWOWプライムで視聴できます。

 

2016年から2020年まで5年にわたり、世界最高峰のパラアスリートを1シーズンに8人ピックアップし、その生きざまに迫る番組で、16年秋にすでにシーズン1(全8話)が公開され、先日10月29日からシーズン2(全8話)がスタートしています。シーズン2ではウィルチェアラグビーのライリー・バット選手(オーストラリア)ら夏季競技選手5人、パラアルペンスキーの森井大輝選手など来年3月に平昌大会を控える冬季競技選手3人の全8選手がラインアップされています。

 

WOWOWの田中晃社長は同シリーズ制作には2020年東京大会の開催が決まり、同社として「大会成功に貢献する手段の一つになれば」という目標があるとし、また、担当する太田慎也プロデューサーは、「パラポーツの世界にもウサイン・ボルト選手クラスのスーパースターがたくさんいる。彼らの存在を知らせたいという思いと、選手を知れば、会場に足を運びたくなるはず。そんな思いをこめてつくっている」と制作意図を話します。

 

本編は1話1選手で50分番組ですが、WOWOWのサイトやYoutubeでシーズン1、2のトレイラー(予告編)と各選手5分間のダイジェスト版が無料で公開されています。こちらを見てもらうだけでも、選手や取り組む競技の様子が興味深く描かれていますので、東京大会や平昌冬季大会のスター候補を今から予習できます。そして、「もっと知りたい!」と思ったら、ぜひWOWOWで本編をご視聴ください。



↑10月27日に都内で開催された、パラリンピックのドキュメンタリーシリーズ、「WHO I AM-これが自分だ!という輝き-」の試写イベントの登壇者たち。左から、WOWOW田中晃社長、松岡修造さん(元テニスプレーヤー)、マールー・ファン・ライン選手(パラ陸上/オランダ)、国枝慎吾選手(車いすテニス)、西島秀俊(俳優)さん、朝原宜治さん(元陸上日本代表)、国際パラリンピック委員会山脇康理事 (写真提供:WOWOW)

 

11月27日には都内で、シーズン2の第1話、車いすフェンシングのベアトリーチェ・ヴィオ選手(イタリア)の番組試写とトークショーが開かれました。現在20歳のヴィオ選手はフェンシングに夢中だった11歳のとき、急性髄膜炎で両手足を切断する悲劇に見舞われたものの、特別な義手を付けて車いすフェンシングに転向。19歳で出場したリオパラリンピックで金メダルを獲得しました。

 

リハビリを経て競技復帰を志したとき、「手のないフェンサーなんて、前例がない」と言った父親に対し、彼女は、「前例がないことは、『不可能』って意味じゃないよね?」と答えたそうです。「それぞれ違って当たり前。違うことは美しい」と話す彼女はまた、スマホを肘で器用に扱ってインスタグラムをアップし、「ベベ」というかわいらしい愛称がピッタリの、今どきの女の子でもあります。

 

選手の生きざまに迫る「WHO I AM」シリーズでは、そんな力強く、「へ~」というエピソードが満載で、選手たちが発する珠玉の言葉の数々は人生のヒントにもなりそうなものばかりです。

 

■車いすテニスの国枝選手、試写イベントで裏話披露

 

27日の試写イベントではさらに、「アスリートがひらく1000日後のTOKYO、そして未来へ」をテーマにトークショーも行われ、元テニスプレーヤーの松岡修造さんをMCに、車いすテニスの国枝慎吾選手、オランダから来日したパラ陸上のマールー・ファン・ライン選手、元陸上日本代表の朝原宣治氏が語り合いました。国枝選手とファン・ライン選手は二人ともシーズン1に登場しています。

 

国枝選手はご存知の方も多いかもしれませんが、車いすテニス史上初の年間グランドスラムやパラリンピック・シングルス2連覇(北京とロンドン)を果たすなど圧倒的な強さを誇り、「世界のクニエダ」として知られるスターです。9歳でガンを発症し、車いす生活になりましたが、車いすテニスと出会います。「オレは最強だ」と書いたテープをラケットに張り、練習中や試合中にその言葉を読むことで自らを奮い立たせ、世界の頂点へと昇りつめます。強気な発言は国枝選手のトレードマークであり、強靭な精神力は最大の強みでもあります。

 

「WHO I AM」の番組ではリオ大会に向かう日々などが描かれましたが、この日のトークショーでは、その裏話の一端が披露されました。

 

国枝選手は15年秋頃から右ひじに痛みを感じるようになり、リオ大会5 カ月前の16年4月に手術に踏み切ります。その回復状況を取材する私たちメディアに対し、「手術した右ひじは万全です」と金メダル宣言を繰り返していましたが、実は痛みが消えることはなく、不安いっぱいの毎日だったそうです。

 

当時の発言について、「メディアの前ではウソをつくこともある。ライバルにも伝わるし、(リオの前は)本心と違うことを言っていた」そうで、不安な心境を吐露できたのが、ただ一人、奥様の愛さんだったと明かします。

 

「どこかで吐き出さないと、プレッシャーでやられそうだった。リオの出場も悩むほどで、弱い自分を見せられる家が僕にとっては救いだった」

 

そうして臨んだリオでは、シングルスはベスト8に終わったものの、斎田悟司選手とのダブルスでは銅メダルを獲得。「妻がいてくれてよかった。(でなければ)銅メダルもなかったと思う」と感謝。番組内では、そんな奥様のアシストの様子も描かれているそうです。

 

トークショーで松岡さんから東京大会について聞かれ、「正直、リオが最後だと思っていたが、東京開催が決まった瞬間から、2020年に向けて頑張ろうと思った」と明かし、「まだまだ進化できる、と日々実感している。この調子でいけば、東京大会で金メダルを獲るのは僕だと思う」と再びの金メダル宣言。「これは、ウソ(ハッタリ)ではなく本当発言です」と茶目っ気たっぷりに、でも、自信にたっぷりの様子でした。

 

ファン・ライン選手は先天性の疾患により両ひざ下義足の陸上選手で、リオで100mと200mでは2冠に輝いており、国枝選手の発言には、「地元の大会だもの。挑戦しないなんてありえない」とエール。彼女もまた、タイトル防衛に挑む東京大会は、「今からとても楽しみ」と笑顔で話していました。



↑パラリンピックのドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」のトークイベントで、俳優・西島秀俊さん(左)から花束を受け取った、車いすテニス・国枝慎吾選手とパラ陸上・マールー・ファン・ライン選手(オランダ)(写真提供:WOWOW)

 

また、シーズン1からナビゲーターとナレーターを務めている俳優の西島秀俊さんがトークイベントにも花束贈呈ゲストとして登壇。ナレーション収録を振り返り、「感動して声が震えてNGになったほど。特に感動したシーンは、家族のお話。(パラアスリートの)ご両親がすごくポジティブで、子供の可能性を信じているところや、国枝選手が奥さんと食事をされるシーンの会話も胸に来るものがあった」と話していました。

 

さらに、「(番組で取り上げた選手の)皆さんは人生を楽しんでいるように見える。全力で立ち向かっているから、苦しそうにしていても輝いている。僕もそうでありたいと思いつつ、(選手のように)自分は人生を輝かせているだろうかと考えると、嫉妬してしまうほどだった」と番組をアピール。

 

「WHO I AM」=これが自分だ!というタイトル通り、画面には各選手の強烈な個性があふれます。西島さんではないですが、「私はどうだろう?」と、きっと考えるはず。太プロデューサーも、「世界のパラアスリートは、自分について考える『気づき』を与えてくれる」とも言っています。パアアスリートも知れて、もしかしたら、「自分自身」ももっと知れるかもしれない、「WHO I AM」シリーズ。まずはダイジェスト版からでも、ぜひ! おすすめです。

 

▼番組公式サイト

http://www.wowow.co.jp/sports/whoiam/

 

(文:星野恭子)