ロンドン五輪ハンマー投げ銅メダルの室伏広治選手の選挙問題が長期化しそうな雲行きとなった。室伏選手と日本オリンピック委員会(JOC)が、国際オリンピック委員会(IOC)選手委員選挙での当選無効を不服とし、国際的なもめごとを解決するスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴したからである。
どだい、事の真相がよくわからない。新聞各紙を読んでも、さっぱりである。取材が浅い。理解度が低い。説明が甘い。だから、自分で取材し、調べた。最初に問題の本質を書く。
悪いのは、JOCとIOCのコミュニケーション不足、いや欠如である。
問題を整理する。その前にIOC選手委員会とはなんぞや。これは1981年に創設されたもので、IOCと選手の橋渡し役となる。1999年、ソルトレークシティー冬季五輪スキャンダルを受けてIOC改革が断行され、選手委員もIOC委員になる権利が与えられてから価値がイッキに上がった。五輪開催都市の投票権を持つことになるからだ。
任期は8年。ただいま20人(3人は名誉委員)で構成。ほとんどが欧米人である。日本人では1996年にシンクロの小谷実可子さんがIOC会長推薦で就任している。あとはテニスの松岡修造氏、スキー複合の萩原健司氏が落選している。前回北京五輪でも室伏選手が立候補したが、落選した。なぜかといえば、選手もJOCも選挙活動をまったくしなかったからである。
今回はJOCが2020年東京五輪招致を目指していることもあり、室伏選手の選挙活動を支援しようとした。ただ、ことしの7月間の日本人IOC委員不在(ロンドン五輪前に竹田恒和JOC会長が就任)の影響が出た。その間、選手委員選挙の規則の厳格化が示されていたからだ。じつは前回北京五輪の際、断トツの当選を果たした韓国のテコンドー選手が毎日、食堂で自己宣伝を繰り返し、欧米のIOC委員、選手から不評を買っていた。
室伏選手&JOCは規則厳格化の認識が甘かったようだ。今回の立候補は21選手だった。上位4人が当選となる。
室伏選手がIOCから警告を受けたのは2回だった。1回目は、開幕直前、①名前を入れた携帯クリーナーを配布②選手村の日本棟に室伏選手の写真入りの反ドーピング運動ポスター掲示③投票説明書の日本語訳を配布―の3点に対して警告を受け、室伏選手&JOC側はすべて即座に回収した。
これはいずれもグレーゾーンだった。とくに③である。投票の手順はややこしい。選手IDでスクラッチ投票カードをもらい、出てきた番号と投票相手をコンピューター端末に入力しなければならない。英仏語で書かれているため、これを日本語訳して渡すことは問題なかろう。ただその説明書には「室伏選手へ一票を」とのくだりが付け加えられてあった。はっきり言って、これはアウトである。