ニューズオプエド

ノーボーダースポーツ詳細
2018年08月20日
「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(235) パラスポーツをテーマした映像作品も続々。「日本パラリンピックの父」を描いたスペシャルドラマも!

東京2020パラリンピックの開会式は2年後の825日。あと2年と迫った大舞台を前に、パラスポーツがメディアに取り上げられることも増えています。


まず、ご紹介したいのが、NHK制作のスペシャルドラマで、1964年の東京パラリンピックを実現させるなど、「日本パラリンピックの父」とも称された大分県の整形外科医、中村裕博士(なかむら・ゆたか/故人)の半生を描いた、『太陽を愛したひと~1964 あの日のパラリンピック~』です。822日(水)午後1000分~午後1110分に、総合テレビで放送予定です。


中村氏は1960年、イギリスに留学し、障害者のリハビリにスポーツを取り入れることの素晴らしさを学びます。帰国後、日本でも取り組み、広めようとしますが、「障害者を見世物にするのか」などの批判もあり、なかなか受け入れられません。


それでも、できうる努力を重ね、64年には東京パラリンピックを実現させ、その後も障害者の社会参加を目標に情熱を傾けつづけます。その原動力は? 成功の要因は? ドラマでは中村氏を俳優の向井理さんが、そばで支えた妻を上戸彩さんが演じています。


中村氏の努力はまちがいなく、日本におけるパラスポーツ発展の第一歩であり、2020年大会の礎です。お時間ありましたら、ぜひご覧ください。


車いすバスケがテーマのドキュメンタリー映画も


86日には、アメリカの車いすバスケットボールチームの実話をもとにしたドキュメンタリー映画、『THE REBOUND』の特別上映会が東京・豊洲のユナイテッドシネマ豊洲で行われ、取材に行ってきました。400席のチケットが完売となる盛況でした。



THE REBOUND』は2016年にアメリカで公開され、数々の映画賞を受賞した作品で、車いすバスケットボールのクラブチーム、「マイアミヒート」が、「2015年車いすバスケットボール全米選手権」で優勝を果たすまでの軌跡を軸に、チーム所属の個性豊かな選手たちの努力や葛藤が描かれています。


今後の日本での上映については未定とのことですが、再上映の可能性もありうるので、詳しい内容は控えます。


ただ、バスケットボールの本場であるアメリカでも、車いすバスケの選手には競技生活をつづけるには資金繰りも含めたいろいろな「壁」があり、決して恵まれた状況ではないこと。障害を負った要因の一つに、「銃」があること。それでも、「車いすバスケが、僕たちのすべてなんだ」と希望を胸に努力する選手たちなど。パラスポーツを取り巻くリアルな現状が赤裸々に映し出された、心揺さぶられるエピソードがいっぱいだった、とだけ、お伝えしておきます。



上映会では、お笑い芸人の麒麟、田村裕さんを総合司会に、本人役で主演したマリオ・モーラン選手と俳優の市原隼人さんによる舞台挨拶も行われました。



ドキュメンタリー映画『THE REBOUND』で主演を務めた、マリオ・モーラン選手(撮影:吉村もと)


モーラン選手は18歳のときに銃で撃たれ、車いす生活となった一人です。元々は野球チームのキャッチャーだったそうですが、障害を負ってから出会った車いすバスケについて、「チームメートと兄弟のような絆を結べるところが魅力」と、笑顔でアピール。


また、観客へのメッセージを求められ、「障がい者にも健常者にも共通して言えることは、家にこもらず外に出てほしい。実は、友人の一人がずっと家に閉じこもっているので、僕は毎日カーテンを開けに行き、太陽の光を浴びさせています。『生きている』ことを感じてほしいから。自分を嫌悪しているひまなんてない。自分を大事にして、人生を楽しんでほしいです」と熱い言葉を送ってくれました。



一方、市原さんは20171月に放送された車いすバスケをテーマにしたドラマ『君に捧げるエンブレム』に出演するなどプレー経験もあります。


「こんなにも鳥肌が立ち、興奮し、泣ける映画はそうそうない。『車いすバスケを通して、人生を取り戻したいんだ』というセリフが印象深かった。選手たちにはコートに入る前にいろいろな(辛い)物語があり、それでも、車いすバスケに救われ、生きがいになり、目標ができた。彼らにとって大切な場所が車いすバスケ。少しでも多くの人に知ってもらいたいです」


舞台挨拶より。左から、麒麟・田村裕さん、市原隼人さん、マリオ・モーラン選手 (撮影:吉村もと)



また、モーラン選手から、ドラマの役作りのためにどれだけ練習したのかと聞かれ、「車いすバスケは本当にハードで毎日筋肉痛になりました。番組で用意してもらった練習場所以外にも、自分でコートを探して練習しましたが、(車いすの)タイヤが焦げるにおいがまたいいんですよね」と競技の難しさと魅力を強調した市原さん。



さらに、父親が車いすユーザーであり、ある時、「こんな姿になってすまない」と何度も謝られたことを明かし、「そんな必要はまったくないのに。(車いすであることは)悪いことじゃないし、カッコ悪くもない。堂々と社会に出てほしい。もし白い目で見られるとしたら、それは社会が間違っていると僕は思います」と言い切り、「障がいを持つ人とどう関わったらいいか分からないという人がまだ多いが、垣根がなくなることを、みんな待っている。映画でも語られていますが、すべての人に人生やスポーツを楽しむ権利がある。この映画がいろんな人の希望になることを願っています」と思いを語りました。


最後に、「バスケ芸人」としても知られる田村さんが、「一歩を踏み出す勇気を映画から教えてもらった。バリアフリーの社会を目指して、みんなでがんばっていきましょう」と締めくくり、上映会は終了。チャンスがあれば、より多くの方に見ていただきたい映画でした。


パラスポーツがテーマの作品や報道は今後、ますます増えていくと思います。さまざまなメッセージが含まれ、考えさせられたり、背中を押されたりすることも多いです。こちらでもまた、ご紹介できればと思います。


(文・取材:星野恭子)