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ノーボーダースポーツ詳細
2017年11月20日
「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(203) ミリ単位の攻防に、驚嘆! シンプルなルールながら奥深い、ボッチャの世界を堪能!
皆さん、「ボッチャ」というスポーツをご存知でしょうか? イタリア語で「ボール」を意味するボッチャという名前が表すように球技で、幅6mx長さ12.5mの長方形のコートを使い、直径10cmほどの赤か青のボールを投げたり転がしたりして目標となる白球(ジャックボール)にどれだけ近づけられるかを競います。



↑的となる白球(ジャックボール)にどれだけ近づけるかを競うボッチャ。(写真:星野恭子)

 

イメージ的には、「カーリング」に似ています。的のジャックボールの横にピタリと寄せて止めたり、強い球でビリヤードのように相手ボールを弾いたり。ジャックボールにぶつけて動かすことで展開を変化させたり、他のボールの上に積んだりできるので、カーリングよりもスリリングかもしれません。

元々は手脚に脳性まひや機能障害のある比較的重度な障害者のために座ったままでも行えるスポーツとして欧州で考案されました。障がいの内容や程度により4クラス(BC1~BC4)に分かれますが男女の区別はなく、種目は1対1で競う個人戦から、2対2のペア戦と3対3で競うチーム戦まであります。



↑障害の最も重いBC3クラスは「ランプ」と呼ばれる滑り台を使ってボールを転がす。ランプの向きや長さは調整でき、選手の指示に従ってアシスタントが行う。ただし、アシスタントはコートには背を向けており、選手の手足の代わりをするだけで、選手がすべて指示をする。準備中のイギリス選手(左)を見つめる松永楓選手(撮影:星野恭子)

 

パラリンピックは1984年ニューヨーク・エイルズベリー大会から正式競技になっていますが、昨年のリオパラリンピックで日本代表がチーム戦で銀メダルを獲得し、一気に注目されました。

障害によって選手の投球スタイルはアンダースローやオーバースローのほか、足で蹴ったり、滑り台のような補助具を使って転がしたり、アシスタントの補助を受ける選手もいたり、多彩なスタイルがあります。1人、または1チームが1エンド6球ずつを投げ、4~6エンドの合計点で競います。

トップ選手の制球力はまさにミリ単位の精度で、どちらがより近いかの判断には正確さが問われ、物差しやコンパスが使われたり、薄い板をはさんだり、光を当てて影を見たりなどが必要なほどです。また、数手先を読みながら1球1球を組み立てる緻密な戦略を駆使する頭脳プレーです。相手との駆け引きや用具の工夫なども加わり、一発逆転もある、奥深い競技である点も醍醐味です。



↑計測用コンパスを使って、どちらのボールが近いかを判定する審判。微妙な距離の場合は、両チームのキャプテン立ち合いのもと、おこなわれることも。

 

さらに、シンプルなルールや座ったままでもできる優しさもあり、子どもから大人まで、誰もがチャレンジしやすい生涯スポーツとしても人気が高まっています。全国の特別支援学校生を対象とした「ボッチャ甲子園」が昨年から始まったり、今年夏には東京・丸の内で「企業対抗ボッチャ大会」が開催されたり、さまざまな形で広がりを見せています。

 

世界クラスのプレーに感嘆!

 

そんなふうに今ホットな「ボッチャ」の国際大会、「2017ジャパンパラボッチャ競技大会」が先週末の11月18日、19日に東京・武蔵野市で開催されました。日本で国際大会が開かれるのは初めてで、リオ銀メダリストを含む日本と、金メダリストのタイと欧州の古豪イギリスが参加して、熱戦を繰り広げました。世界トップクラスのプレーを間近に見る貴重な機会とあって、会場観戦者は2日間で約1,000人を集めました。



↑「2017ジャパンパラボッチャ競技大会」表彰式より。右から、BC3ペア戦優勝のイギリスチーム、日本チーム、BC4ペア戦とチーム(BC1/2)優勝のタイチーム

 

今大会では1日にペア戦2試合(日本対タイ、イギリス)とチーム戦(日本対タイ)の3試合ずつが行われました。日本は随所に好プレーも見られましたが、惜しくも初日は3連敗し、2日目もペアのタイ戦とイギリス戦では惜しくも敗れてしまいました。でも、大会最終試合となった日本とタイの3対3のチーム戦は特にドラマティックな展開となりました。このカードはリオ大会の決勝戦と同一カード。つまり、日本が敗れて銀、タイが金メダルを獲得した、「ライバル対決」です。初日はミスの多かった日本が2-7で落としていたので、雪辱を期した戦いでもありました。

日本はリオメダリストの杉村英孝選手、廣瀬隆喜選手、藤井友里子選手でスタート。第1エンド先取したものの、2エンドで逆転され、また取り返すというしびれる展開が続きます。緊張感あふれるなか、第4エンドからは藤井選手に代えて、若手成長株の中村拓海選手を投入。



↑若手のホープ、中村拓海選手。「今大会ではプレッシャーのなか、落ち着いてプレーすることを学びました」

 

一進一退の状況は変わらず、4-4の同点で並んだ最終第6エンドは両チームとも「完璧!」な投球の応酬でした。会場からも1球ごとに、「すごい」「うわ~」と感嘆と拍手が響くほど、最後はどちらの球が近いか審判の計測も長時間にわたるほど。結局、「同距離」となり、両者に1点ずつが入り、第6エンドを終えて、5-5の同点と一歩も譲らない大熱戦。今大会初のタイブレーク(延長戦)に入りました。

ちなみに、ボッチャは1投目と2投目は両者が交互に投げますが、3投目からはジャックボールより遠いほうが投げるルールです。連投して早めに自球を使ってしまうのは不利になります。



↑試合中、ボールの近くに集まり、次の投球をめぐって作戦会議も行える。チーム戦は1エンドで一人の持ち球は2球のみ。チームワークも重要

 

手に汗握る展開に会場の緊張感も高まるなか、タイブレークは1投目にタイが投げ、日本の2投目のあと、王者タイにミススローが続きます。4投目でジャックボールを弾いて展開の変化を狙ったタイでしたが、一方、日本は確実にジャックボールに自球を寄せていきます。6投目に少し狙いを外した中村が、7投目でしっかりと取り返す好スローを見せたあと、8投目に廣瀬選手が「ここしかない」というポイントにピタリと止めます。「イメージ通りのところにボールを置けた」という快心のスローにトレードマークの「雄たけび」が思わず飛び出すほどでした。



↑タイブレークで、値千金のショットを決め、雄たけびを上げる廣瀬隆喜(たかゆき)選手。パワフルさも魅力!

 

コースをふさぐような廣瀬選手のボールの位置に、精密機械のようだったタイ選手も乱れ、万事休す。日本がタイブレークを制し、宿敵タイに一矢を報いました。初日と合わせ1勝1敗なったものの、獲得エンド数でタイが大会優勝となりました。

でも、チーム戦の頂上対決はボッチャの見どころがぎっしり詰まった一戦となりました。実は、今大会の2試合を含め、リオ大会後の今年、タイとは4試合を戦って、2勝2敗という日本チーム。

試合後、杉村選手は、「これまでは大差で敗れるイメージがありましたが、自信になりました。これからも頑張りたい」と話し、廣瀬選手も、「リオは銀だったが、東京では金を獲りたい」と意気込んでいました。



↑203_8 日本の司令塔で、リオパラリンピックでも、主将としてチームをまとめた杉村英孝主将。前の選手がジャックボールを弾いてばらけた展開となったコートを見つめ、次の一手を思案中

 

閉会式では、2019年1月19日、20日に、ジャパンパラ大会を引き続き開催されることが発表されました。なお、大会の模様はインターネットで全試合の録画放送が見られますので、お時間があったら、ぜひ覗いてみてください!

ボッチャ、面白いです。観るのも、するのも。そして実は、まだまだ見どころや魅力がいっぱいなんです。また、機会を見つけてお伝えしたいと思います。

 

▼ボッチャのジャパンパラ競技大会 録画放送

http://www.ustream.tv/channel/CYWL2Ltcvtu

 

(文・写真: 星野恭子)