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2017年08月21日
「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(192) 次世代を担うアスリートたちが躍動!~世界パラ陸上ジュニア選手権
日本のパラ陸上界はこの夏、7月下旬にロンドンで開かれた「世界パラ陸上競技選手権」で過去最多のメダルを獲得する活躍をみせましたが、実は8月3日から6日まで、19歳以下の若い選手を対象にした、「世界パラ陸上競技ジュニア選手権大会」もスイスで開かれ、日本は金7個を含む全9個のメダルを獲得。こちらも大きな手応えを得たようです。

私は残念ながら現地取材はできなかったのですが、インターネットで行われたライブ中継と録画配信で日本選手の試合を中心に観戦。そして、8月8日に帰国した選手たちを成田空港で取材しました。その内容も含めて、今回は、「世界ジュニア選手権大会」をリポートします。

実は、パラ陸上のジュニアを対象にした世界選手権は、今大会が史上初めての開催でした。健常者の陸上では18歳以下を対象にした「世界ユース選手権」が1999年から開催され、若い選手が国際経験を積み、自分の位置を知る貴重なステップの大会となっています。実際、日本の新エース、サニブラウン・ハキーム選手は2015年大会で金メダル2個を獲得して注目を集め、シニア大会での活躍の第一歩となったのは記憶に新しいところです。

パラ陸上でもそういう道筋をつくりたいということで新設された、今年のスイス会には40カ国から約270選手が集まりました。「初めての国際大会」という選手が大部分ですが、なかには7月の「世界パラ陸上ロンドン大会」にも出場した選手が29名いたり、パラリンピックのメダリストもいてハイレベルな戦いも見られたようです。パラスポーツの場合は中途障がい者も多いですが、ジュニア大会の開催は競技の普及、すそ野の広がりが感じられます。選手にとっても国際大会という目標ができたことは練習への大きなモチベーションにもなるはずです。

最多の選手を送ったのはイランで24選手、以下、アメリカ(20選手)、ドイツ(17)、メキシコ(16)とつづき、日本からは14選手が参加しました。そして、冒頭でもお伝えした通り日本チームは金メダル7個、銅メダル2個を獲得しました。

なかでも、T47(上肢障がい)クラスの鈴木雄大選手(日本体育大学)は出場した3種目すべてで自己記録を更新し、金メダルを獲得する大活躍を見せました。走り幅跳び(6m51)、100m(11秒30)、そして、400mは50秒35で日本新記録でもありました。

鈴木選手は、「初めての世界大会で結果を出せたこと、特に400mで日本記録を更新できてよかったです。日本では同じクラスの選手はそれほど多くないので、今回、同じクラスの多くの選手と戦えていい経験になったし、自分を見つめなおす機会にもなりました。これからもっと伸ばしていきたいです」と、目を輝かせていました。

また、高校2年生で鮮烈なデビューを飾ったのは、新保大和選手(兵庫県立武庫荘総合高)です。F37(脳性まひ・立位)クラスの投てき選手で、今大会では11m98の日本新記録をマークした砲丸投げと、円盤投げ(38m81)で2冠に輝きました。ただし、6月の日本選手権で日本記録(44m46)を樹立した円盤投げでは思ったような結果を残せず、悔しそうだったのが印象的です。

「記録は微妙でしたが、メダルを獲れたことはよかったです。初めての世界大会で、周囲の選手の(体の)大きさに驚いた。僕はメンタル面でもっと強くなっていけたらと思いました」と話してくれた新保選手。貴重な体験でつかんだものは、金メダル以上だったかもしれません。

T47(上肢障がい)女子の100m(13秒34)で金メダルを獲得した三須穂乃香選手(日体大)は、今大会前は腰痛に苦しみ調整不足で不安もあったそうですが、手応えのあるレースになったようです。

「この試合に間に合うか不安でした。でも、『絶対に結果を残す。だめなら、陸上をやめよう』というくらいの思いで臨みました。スイスに入ってから周りのサポートのおかげもあり、調子が上がっている実感もあり、試合が近づくにつれて、『自分にはできる』と思えました。久しぶりに結果を残せて、東京(2020大会)に向けて新たなスタートラインに立てたかなと思います」

他に、T20(知的障がい)クラスの外山愛実選手(宮崎銀行)が400m(1分01秒86)で金メダル、T54(車いす)の山北泰士(ソシオSOEJIMA)が800m(1分50秒94)で銅メダル、脳性まひ・立位クラス(T37)の吉川琴美選手(SRC)が200mで日本記録(31秒64)をマークして銅メダルを獲得しています。

日本チームの小林順一監督によれば、今大会は選手数の関係から一部の種目では複数の障がいクラスを混合(コンバインド)して競技を行い、順位は実際の記録にクラスごとに定められた「係数」を掛けた「計算記録」によって決められるラザ(Raza)ポイントシステムが導入されたそうです。そのため、実記録では下回る障がいの重い選手が順位では上回るということがあったり、また、参加人数が規定に達せず、メダル授与対象とならない「ノンメダル種目」となってしまった種目もいくつかあったそうです。

つまり、大幅に自己ベストを更新しながら、メダルを逃した選手も少なくなく、「東京2020大会、あるいはそれ以降につながる成果が得られたかなと思います」と、日本選手の活躍を評価されていました。また、今大会での若手選手の活躍が新たな選手の発掘につながればと期待を寄せていました。

若手選手の台頭は先輩選手への刺激にもなるはずです。切磋琢磨できる環境で日本チームに厚みが出ることが未来の可能性を広げます。3年後の東京大会での活躍ももちろん楽しみですが、2020年はゴールではありません。そういう意味で、ジュニア層がこのタイミングで世界を体験し、自信や課題を得られたことは大きな意義があったと思います。

今大会は中国やウクライナなどシニアレベルでの陸上大国が不参加だったのは少し残念ですが、国際パラリンピック委員会(IPC)はすでに4年後の2019年に第2回大会開催の意向を示しています。大会自体のさらなる発展を期待したいですし、2020年東京パラリンピック前年でもあり、日本チームにとっても大きな弾みとなることを願います。

その前に、来月9月23日、24日は国内最高峰のジャパンパラ陸上競技大会が福島市で開催されます。世界を経験した若手選手たちが、それぞれの先輩選手たちとどんな戦いを繰り広げるか。そちらも楽しみにしたいと思います。

(文:星野恭子)