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2017年06月19日
「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(185) 視覚障がい者柔道、ウズベキスタンW杯代表11選手が決定。東京2020への第一歩!
国際視覚障がい者スポーツ連盟(IBSA)主催でこの秋に開催される視覚障害者柔道のワールドカップ・ウズベキスタン大会(10月5日~15日)の日本代表選考大会が6月18日、東京の講道館(文京区)で行われ、各階級で優勝した男子7名、女子4名の代表11選手が決定、発表されました。

代表に決定した11選手は下記の通り(写真キャプション)です。なお、現時点ではウズベキスタン大会の大会要項が未確定のため、大会規模が決定しだい、代表選手が追加発表される可能性もあるそうです。


↑  IBSA視覚障がい者柔道ワールドカップ・ウズベキスタン大会日本代表選手。前列左から、女子48kg級半谷静香選手、同52kg級石井亜弧選手、同57kg級廣瀬順子選手、同63kg級小川和紗選手、後列左から、男子100kg超級正木健人選手、同100kg級松本義和選手、同90kg級廣瀬悠選手、同81kg級北薗新光選手、同73kg級永井崇匡選手、同66kg級藤本聰選手、同60kg級平井孝明選手

見えない、または見えにくい選手を対象とする視覚障がい者柔道はパラリンピックの正式競技のひとつです。大きな特徴は、「両者が組み合った状態から試合が始まること」。いわゆる、「組み手争い」がないので、「はじめ」の声がかかると、すぐに技の掛け合いとなります。今大会も、開始3秒で「背負投イッポン!」といった豪快な試合もありました。一方で、常に攻め守る選手たちの体力の消耗は激しく、畳のそばで見守っていると、「ハーハー」と大きな息遣いも聞こえてくるほど。テクニックとパワー、スタミナも必要です。

 


↑  視覚障がい者柔道は組み合ってから試合が始まる。藤本總選手(右)は、ウズベキスタンW杯代表に決まり、「自分に夢を託してくれる大勢の人に結果で恩返ししたい」と意気込む

組み合って試合が始まる以外は、例えば、視覚障がいの程度に関わらず、体重別での階級制で競うなど、オリンピックの柔道とほぼ同じルールで行われます。昨年12月に国際柔道連盟(IJF)が新ルール案を発表しましたが、今回の選考会もIJF とIBSAの柔道試合審判規定などにしたがって試合が行われました。

主な変更点としては試合時間が男女とも4分間となったこと、「合わせ技一本」や「有効」が廃止されたこと。つまり、「積極的に攻め、技による決着を目指す」ことが最優先された新ルールとなっています。

日本選手たちにとっては今回の選考会が、リオデジャネイロ・パラリンピック後の初の公式戦であり、まだ新ルールへの戸惑いも見られました。例えば、男子66kg級優勝でW杯代表に決まったリオ銅メダリストでもある藤本總(さとし)選手は、「合わせ技1本がなくなったのは辛い。慣れが必要」と話していました。

 

また、リオ代表だった、北薗新光(きたぞの・あらみつ)選手も、「自分には決め技が少ないので、合わせ技の優勢勝ちがなくなったのは不利。でも、4分間動き続けられるスタミナには自信がある。マイナスもあれば、プラスもあるという風に捉えている」と力強く話していました。受け入れて、慣れていくことが必要なのでしょう。


↑  リオ大会での73kg級から81kg級へ1階級あげた北薗新光選手(手前)、「今が一番、落ち着いた階級だと思う。W杯は楽しみ。自分の柔道を全力で出し切りたい」と意気込む

 

今大会、もう一つ気になったのが、日本の選手層の薄さです。柔道はお家芸といっても、視覚障がい者柔道は選手数が少なく、今回代表に選出された11名のうち、4選手は他選手のエントリーがなく、「不戦勝での優勝」で代表に選出されています。

その一人、100kg超級の正木健人選手はロンドンパラリンピックで金メダル、リオ大会も銅メダルを獲得していますが、「最近、すごく思うのは、試合がないと、普段の練習にも身が入りにくいこと。ウズベキスタンでは優勝したい気持ちもあるが、貴重な実戦の機会なので、1戦1戦を大事に戦いたい。3年後の東京大会での金メダルのために、まずは世界のレベルをしっかり知ることが重要。数少ない国際大会なので無駄にはできない」と話していました。

男子以上に深刻な選手不足である女子は3人が不戦勝。その一人、リオ銅メダルの廣瀬順子選手は、「試合は緊張するので、(不戦勝での代表選出は)嬉しいような悲しいような……」と複雑な心境を明かしてくれました。W杯は、リオ大会から1年以上も実戦機会から離れての出場が見込まれています。試合勘をどこまで戻せるか、不安感も大きいようです。

選手の多くは地域の柔道場や大学など一般の選手とともに練習を行っています。でも、「組んでから始める柔道」としての練習はなかなか難しいものがあるそうです。まして、試合はあくまでも視覚障がい者同士でなければなりません。この辺は、大きな課題です。

新ルールへの慣れ、実戦感覚の強化など、ウズベキスタンW杯は、3年後の東京パラリンピックに向けた、まさに第一歩であり、大きな一歩。代表選手たちにはそれぞれの目標をしっかり持ち、実りあるいい戦いを期待したいです。

 

(文・写真:星野恭子)