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2017年06月05日
「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(183)パラ陸上日本選手権が東京・駒沢で6/10に開幕。リオ・パラメダリストから、東京目指す若手まで!
東京パラリンピックが3年後に迫り、パラスポーツへの注目は高まっていますが、「なかなか見るチャンスがない」という声も聞かれます。そんな人におすすめしたいのが、6月10日(土)から2日間にわたって開催されるパラ陸上の日本一決定戦、「第28回日本パラ陸上競技選手権大会」です。会場は東京・駒沢オリンピック公園競技場(世田谷区)で、同選手権がアクセスも便利な東京で開催されるのは大会史上初めて。入場も無料で、気軽に観戦できます。

今大会には史上最多となる約250選手が集結予定。昨年のリオデジャネイロ・パラリンピックのメダリストたちもほぼ顔を揃えます。左大腿義足で、走り幅跳び銀の山本篤選手や競技歴4年で銀メダル2個を手にした車いすアスリート、佐藤友祈選手、また視覚障害があり伴走者とのチーム戦で銀メダル獲得のマラソンランナー、道下美里選手など、「3年後の東京では金」を誓う選手たちの世界レベルのパフォーマンスを間近に見るチャンスでもあります。

もちろん、3年後の東京を見据える若手選手たちも多数エントリー。新ヒーロー、新ヒロインを目指します。また、来月7月14日から、いわゆる「世界陸上」のパラアスリート版、「世界パラ陸上競技選手権ロンドン大会」の開催も控え、約50名の代表選手たちにとっては今大会で手応えを得て、大舞台への大きな弾みにしたいところです。

■注目種目や選手たち

 特に注目選手が多いのが走り幅跳びです。リオ銀の山本選手(自己最高6m62)は3連覇を目指す世界陸上につながる迫力あるジャンプを見せてくれることでしょう。右上肢機能障害の芦田創(はじむ)選手は初のパラリンピックとなったリオ大会で12位に終わった悔しさを武器に発奮。今年3月の大会で自己記録を30cm以上伸ばす、7m15の大ジャンプを見せ、日本のパラアスリート初の7mジャンパーとなっています。

女子も、5月に3m97の自己新記録をマークした右大腿義足クラスの前川楓選手や、膝下義足クラスの中西麻耶選手と高桑早生選手など、それぞれ初の表彰台を目指す世界陸上を前に、国内のファンの前で大きな跳躍を目指します。

また、競技人口も多く、ベテランから若手まで有力選手がひしめく車いすクラスのトラックレースも楽しみです。日本記録保持者の樋口政幸選手に、今年2月の東京マラソン優勝で注目された渡辺勝選手や同3位の鈴木朋樹選手ら成長株の若手が挑みます。車いすレースは自転車レースに似ています。レースは空気抵抗による減速を少なくするため先頭を適度に交代(ローテーション)しながら進み、選手はスパートのタイミングを探ります。そんなジリジリする駆け引きも見どころです。

■2つのリレー種目にも注目!

陸上競技の花形種目といえるリレー種目はパラリンピックでは視覚障害など4クラスで行われていますが、出場選手不足もあり国内大会での実施は少ないのが現状。でも、今大会では2レースが実施される予定で、貴重な観戦機会となります。

実施されるのはまず、男子T42 -47(切断・機能障害)の4x100mリレーで、リオパラリンピックで史上初の銅メダルを獲得した選手たちを中心にメンバー構成される予定です。上肢障害の選手もいるので、バトンは使わず、体のどこかにタッチしてリレーを行うのがルールですが、日本はタイムロスの少ない絶妙なタッチを武器にしています。

もうひとつは、男子T 53-54(車いす)の4x400mリレーで、過去にアテネパラリンピックで銅メダル獲得などの実績がありますが、日本選手権では久しぶりの実施となります。こちらもバトンは使わず、体のどこかへのタッチによってリレーします。ただし、タッチのときに背中を押すなど助力を与えることはルール違反。テークオーバーゾーン内でタイミングを図って次走者が助走し始めますが、できるだけタイムロスを少なくし、リレーすることが重要です。

 ■障害の種類や程度に応じた「クラス分け」がポイント

ここで少し、パラ陸上の基本を確認しておきましょう。ルールはオリンピックの陸上競技とほぼ同じですが、大きな特徴は「クラス分け」と呼ばれる制度。選手にはみな、何らかの障害がありますが、一口に障害といっても、それぞれ状態はさまざま。できるだけ条件を揃え公平に競えるよう工夫した制度が「クラス分け」で、選手は障害の種別や部位、程度ごとに「クラス」に分かれ、競技は基本的に同一クラスごとに行い、競技人数などによっては近いクラスを統合(コンバインド)して行うこともあります。

視覚に障害があり、「見えない」「見えにくい」なか競技を行うクラスでは、視覚を補う伴走者やガイドなどとともに競技する選手もいます。そうしたアシスタントとのコンビネーションも重要です。知的障害クラスは選手単独で競技を行いますが、各選手で障害の特性が異なるのが特徴です。脳原性で身体にまひがある選手はまひの部位や程度によってクラス分けされ、立位、または車いすで競います。

先天的、または後天的に上肢、または下肢に機能障害や欠損などがあるクラスでは、義手や義足など欠損部位を補う義肢を使って競技する選手もいます。そうした義肢はあくまでも左右のバランス調整を目的に使うものであり、サイズなどには規定があります。義足の反発力などが競技に有利に働くのではないかといった指摘もありますが、使いこなすための練習も必要ですし、強い反発力を受け止められる強い筋力も必要です。市販されている同じ型の義足を使っても、選手ごとに記録の差が見られるのは、そういう理由があります。

同様に下半身に障害があり、立って競技ができない選手は、トラック種目では「レーサー」と呼ばれる競技用車いすに乗って競技し、投てき種目では身体が固定できる投てき専用台に座って競技します。「レーサー」は軽く丈夫なアルミやチタンなどの素材が使われたり、研究開発にも自動車メーカーが参入したり進化が見られます。とはいえ、重要なのは選手個々の障害や体格に合わせることが重要で、たとえば車いすを回すためのパーツ(ハンドリム)の位置やサイズを腕の長さに合わせたり、座席の高さや角度をハンドリムを最も回しやすく力を加えやすいように調整したりします。日々の練習のなかでトライ&エラーをくり返しながら、自分に最適な「ポジション」を探すプロセスもまた、選手にとって勝つための重要な要素となります。

「クラス分け」は慣れないと複雑に感じられますが、選手が残された機能を最大限に活かせるよう工夫したもので、パラスポーツの大きな特徴です。3年後の東京パラリンピックをより楽しむためにも今から見慣れることが大切。今年の日本選手権はそういう意味でも会場観戦の大チャンスです。また、ロンドン世界陸上直前となる来月7月1日~2日には関東パラ陸上競技選手権大会(町田市立陸上競技場)もあります。両大会ともおすすめ。世界を目指しパフォーマンスを磨く選手たちに会いに、ぜひ会場にご来場ください!

【IPC公認 第28回日本パラ陸上競技選手権大会】

会場: 駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場(東京都世田谷区)

日程: 6月10日(土)10時~

200m / 800m /(1500m予選)/ 5000m / 走幅跳 / 砲丸投 / やり投 / 4x100mリレー (T42-47)

6月11日(日)10時~

100m / 400m / 1500m(決勝)/ 10000m / 走高跳 / 三段跳 / 円盤投 / こん棒投 / 4x400mリレー (T53-54)

概要: 日本パラ陸上競技連盟  https://jaafd.org/events/01-1/20170413_ipc

 

(文: 星野恭子)